第10話  「アマンダとのたたかい」

 ようやく大雨があがり、風も弱くなって、「雷さま」も、どこかに去ってゆきました。


『やれやれ、すごい嵐だったね。「ぱっちゃくん」もう大丈夫だよ』


 「くまさん」が言いました。


 「ぱっちゃくん」は手でお顔をおおってしまっていましたが、やっと少しだけ、 目のところだけ出して、言いました。まだべそをかいていましたけれどね。


『うん・・・もう、こわくないよ。』


『うん。「ぱっちゃくん」は強い子だからね。』


 「くまさん」が言いました。


『うん。』


 「ぱっちゃくん」が少し笑いながら言いました。


『ぱっちゃくん」が笑った!』


 みんなが拍手しました。


 「ぱっちゃくん」は、ちょっと照れくさそうでした。


『よし、では、出発だ!』


 「くまさん」が元気よく言いました。


 大きな牛の「もーくん」が、お口でくわえていた木の枝を離しました。


 そうすると、「たらい」は、ゆっくりと階段の下を離れて、また川の流れの中に、入ってゆきました。


 まだ、流れは大分速かったのですけれど・・・。


 大きな川が、すぐにもう、目に前に来ました。


   

     *****   *****   *****



 何万、何十万の「ぬいぐるみさん」たちが、迫ってきていました。


 「さあ、この子たちを「ぎゅーっ」としてあおげ、そのあとで、あたしが魔法をかけてあげる。そうしたら、この子たちは、お前たちの仲間だ。」


 『むむむ、これはピンチだ。』


 カリス君が言いました。


 そのときです、「ぬいぐるみ」ではない、プラスチックの「ロボット恐竜くん」と、しっくんが幼稚園生くらいの昔からおうちにいる「古株」(ふるかぶ)の、ブリキの「怪獣くん」が、大きな叫び声を上げました。


 『ぐぎょわー!!』


 『おぎょわー!!』


 そうして、そのお口からは、それぞれ真っ白な煙を吐き出しました。


 それから、お口をバグバグさせながら、長くて強いしっぽで、迫ってくる、魔女の奴隷になった「ぬいぐるみさん」たちを、蹴っ飛ばし始めました。


 体が硬くて、力がものすごく強いので、「ぬいぐるみさん」達にはまったく歯が立ちません。


 もう一人の「ロボットコンピューターくん」も、こっそりついてきていました。


 彼には、強力な突進力があります。


 魔女の「ぬぐるみさん」達は、ぼんぼんと、はね飛ばされてしまいます。


『あらら、あんなの連れてきたかしら。「ぬいぐるみさん」じゃないんだから、これは約束違反よ。』


 魔女アマンダが文句を言いました。


『いえ、これは「正当防衛」(せいとうぼうえい)であります。』


 いつもおねだりしている「わんさん」が言いました。


 そうして、とうとう、魔女の「ぬいぐるみさん」たちと、「しっくん」のおうちの「ぬいぐるみさん」と「恐竜くん」「怪獣君」たちは、にらみ合いになりました。


『もう、これじゃあ勝負がつかないわね。しかたがない。あたしがけりをつけてあげるよ。さあ、おまえたち、すべてを忘れて、あたしの言いなりになるんだよ。』


 魔女アマンダが、呪文を唱えようとしました。


『まって、魔女のお姉さん。』


 魔女はまた「お姉さん」と言われて、うれしくて、でもすこし、がっくりしました。


『なんだい、「こざかしい」子だねえ、お前は。』


 「小さいパンダさん」が「提案」しました。


『魔女のお姉さんは、ぼくたちともお友達になりたいんでしょう?』


『「おともだち」じゃなくて、本当のところは、「どれい」だよ「ど・れ・い」。』


『お友達は良いものだよう。いつでも「魔女のお姉さん」のお話をちゃんと聞いてあげるよ。それから、「ほめたり」「なぐさめたり」「しったげきれい」したりするよ。いっしょにお話ししながらごはんたべたり、「子守唄」をうたってあげたりもするよ。』


『歌なら、他の子たちも歌ってくれる。眠るときは、周りをたくさん取り囲んでくれる。でも、「ほめたり」「なぐさめたり」「しった・・・なんとか」はないなあ。それは、あたしが知らないものだからかねえ。』


『うん。きっとそうだ。ぼくたちは、いつも「しっくん」を「しったげきれい」してきた。「ぱっちゃくん」が大きな太鼓をたたくんだ。「こんちゃん」がお口で「鈴」をならす。「くまさん」が「タンバリン」を、お耳でならすのさ。「ねずくん」がゴムのひもを「びよーん」って鳴らす。他のみんなも、それぞれいろんな音を出したり、声を出したりして言うんだ。「しっくんがんばれ! しっくんがんばれ!」って。「ぱっちゃくん」の太鼓は、いつもリズムがだいぶん、ずれるんだけれど、「しっくん」はね、それがいいって言うから、「ぱっちゃくん」のは直らないんだ。もっとも、「指摘」(してき)しても、よくならないけど。』


『ふうん。それ、あたしにも、やっておくれかい?』


 魔女は、とても興味をひかれたのです。


『いいよ。でも、そのためには、ぼくたちには魔法をかけないこと。それと「くまさん」たちが、「火星の女王様」のところに行く手伝いをすること。』


『ふうん。じゃあ、あたしが眠るとき、子守唄を歌ってくれるかい? お話もしてくれるかい?』


『もちろん、いいよ。で、あなたがずっと、あきずにいられて、「くまさん」たちがお薬をもらえたら、ここの子たちを、元のおうちに戻してほしいんだ。』


『それはダメだね。ま、せいぜい半分だね。それとお前たちが、ずっとここにいること。それなら考えてやってもいい。しばらく様子を見ながらだけどね。』


 魔女アマンダは、少し「ずるがしこく」意地悪そうに言いました。


「小さいパンダさん」はちょっと考えて答えました。


『わかった。じゃあ、「くまさん」が「火星の女王様」に会えたところで、また「再検討」しようよ。』 


『いいだろう。・・・ほほほほほ!(・・・どうせ、「火星の女王様になんか会えるわけないからね。)』


 おしまいの方は、「魔女」が心の中で、考えたことなのですけれど・・・。



    ***   ***   ***   ***



「くまさん」たちの「たらいは」、ついに大きな川の中に、流れてゆきました。


それはそれは、とてつもなく、大きな川でした。


向こうの岸は、遥か彼方に、ぼんやりと浮かんでおりました。





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