第8話  「アマンダのお城」

 「魔女アマンダ」は、お城の中の、それはそれは大きな部屋に住んでいました。


 そこには、何十万という「ぬいぐるみ」さんたちが、世界中から集められていたのです。


 魔女はそのお部屋の真ん中に、自分のテーブルや、ベッドや、お化粧台などを置いていました。


 そうして、毎日たくさんの「ぬいぐるみ」さんに囲まれて、ご飯を食べたり、お茶をしたり、おやつをしたり、お風呂に入ったり、眠ったりしていたのです。


「ぬいぐるみさん」たちは、魔女に魔法をかけられて、それまでの自分のお友達の事は、すっかり忘れてしまっていました。


 そこに、「しっくん」のおうちから、たくさんの「ぬいぐるみ」さんが連れてこられたのでした。


『さあ、今日からここが、あななたたちのおうちなんだよ。もう、今までの持ち主の事は忘れるんだよ。でも、その前に聞いておこう。あの川で何をしていたんだい?』


「小さいパンダさん」がおそるおそる、言いました。


『「しっくん」が病気になったんだ。それで、「くまさん」たちは、「火星の女王様」のところに、お薬をもらいに出発したんだ。』


『あらま、あの「たらい」に乗ってかい?』


 魔女は大声で笑いました。


『いったい、あんたたちは、「火星」というものが、どこにあるのか、知っているの?』


 「オルゴールのくまさん」が、少し怒ったように言いました。


『「くまさん」は行き方を知っているんだ。』


『ほう?どうするの?』


 魔女アマンダが意地悪く聞きました。


『まず「タルレジャ王国」に行く。そこから、「火星」に行く船が出るんだって。』


 魔女は目を細めて、おもしろそうに、言いました。


『ふうん。「タルレジャ王国」ねえ。でもね、そこは、もーのすごく遠くの海の中にある、「伝説」の国だよ。うわさは聞いたことはあるけど、人間は、ほとんど誰もまだ見たことがないんだ。ところがね、「火星」は、もーっと、もーっと、ものすごく遠くの、「宇宙」の中にあるんだ。もうちょっとむつかしく言えば、「火星」は太陽の周りを巡る八つの惑星の一つで、地球のもう一つ向こう側の軌道を回っているんだよ。半径は3、397キロメートルで、太陽からの平均距離は約1.52天文単位さ。火星の一日は約24時間で、自転軸が25,2度傾いている。まあ、いくらか斜めになって回ってるのさ。だから地球と同じように「四季」がある。やれやれ・・・。』


 「魔女アマンダ」は一息入れました。


『そこに行くには、まずは、地球から飛び出さないとダメなんだよ。でもそれには猛烈なスピードを出さないと、地球にまた落っこちてきてしまう。魔女でも出来ないんだよ。まあ、あんたたちには、「火星」には行けないねえ。』


『そんなことない。「くまさん」達ならきっと行けるんだ。』


 魔女は、また笑いました。


『それより、ここに来て、このまま暮らした方が、幸せというものだ。』


 魔女は、テーブルの下から、まんまるい球を取り出しました。


『これはね、昔から魔女が使う道具だよ。まあ、テレビみたいなものさ。ただしカメラはいらないのさ。ううん。いたいた。じゃあ、ちょっとだけ、いじめてやろうかねえ。ほほほほ・・・・・。』


 魔女アマンダは立ち上がり、呪文を唱えました。


『ウツレー、ウツレー、バババ、ボボボ、ドカーン!』


『変な呪文。』


「小さいぱんださん」が言いました。


『おだまり! これはね、まあ、暗号みたいなものさ。パスワードなんだ。だから、魔女によってそれぞれ違うんだよ。ほら、見えた。』


 なるほど、その奇麗な玉には「たらい」に乗った「くまさん」たちの姿が映りました。


『ようし、雨よふれー、風も吹けー、嵐よふけ~~、雷さまも落ちろー!! ほほほほほ!・・・』



 そうしたら、もう大変です。


 今まで晴れていた、「くまさん」たちの上の空が、見る間に真っ黒に曇って、雷さまが鳴り出しました。


 風が、どわーっと吹き始め、大雨がふり出しました。


『うわー、雨だあ!!』


 「こんちゃん」が叫びました。


 雨はどんどん強くなり、ものすごい風が「たらい」の周りをぐるぐると回りだしたのです。そうして、雷さまが、あちらこちらに、落ちてきだしたのでした。




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