第6話  「くまさんたちの旅立ち」

 「たらい」は、床に落ちました。


 今度はそれを運び出さなければなりません。


 これは、まあ言ってみれば、大人たちが「トラック」を「車庫」から人力で引っ張り出すようなものだったのです。


 おお仕事です。


『よいしょ! よいしょ!』 


 みんなで力を合わせて、がんばりました。


『みんなで川まで運ぼう。』


 くまさんが言いました。


 みんなは、なんとか、大きな「たらい」をお風呂からひきずり出し、それから、「ろうか」を(しっくんのおうちはそんなに大きくはないので、短い「ろうか」なんですが)ひきずってゆきました。


 やがて「玄関」に到着しました。


 でも、まずは、「玄関」を開ける必要があります。


 力自慢の「ぱっちゃくん」が、開けようとしました。


 でも、奥さんの「びーちゃん」が、しっかり鍵をかけて病院に出かけたので開きません。


『「かぎ」を開けないとダメなんだ。』


 「くまさん」が言いました。


『どうするの?』


 「ぱっちゃくん」が、もう、べそをかきながら言いました。


『ほら、この二個のカギを開けるんだ、かちっと外して』


 カギはけっこう硬くて、「ぱっちゃくん」の力だけでは動きません。


 でも、触るところが狭いので、みんなで一緒に引っ張ることもできませんでした。


『では、「ぱっちゃ君」が、下から押すんだ、で「わんさん」が上から引っ張って。』


 「くまさん」が指示をしました。


『じゃ、せーの、でゆきます。』


 二人は息を合わせて、「ぱっちゃくん」は力いっぱいカギを下から押し、「わんさん」は上から引っ張りました。


 がちゃ!!


 鍵が開きました。


『やったあ!』


 みんなは、大きな「たらい」を玄関から引きずり出して、道路の向こうの川に向かいました。


『道路があるよ。自動車に気を付けてね。』


 「くまさん」が、自動車が来ないかどうかの見張りをしました。


『オーケー。大丈夫、わたって。』


 みんなは、『よいしょ、よいしょ』と言いながら、「たらい」を川岸に持ってゆきました。


『よし、じゃあこの階段から降りよう』


 川に降りることができる狭い階段を、みんなで注意深く降りてゆきました。


 真夜中で、人は誰もいませんでした。


 たくさんの、「ぬいぐるみさん」たちが、大きな「たらい」を引っ張ってゆく姿を、もし人間が見たら、きっと素晴らしい光景だったに違いありませんよね。


 それで、ついに「たらい」は、川に浮かんだのです。


『では、行ってきます。』


 「くまさん」が言いました。


 「ぱっちゃくん」は、「たらいの」中で、もうびーびー泣いていました。


 お見送りする「ぬいぐるみさん」たちも、実は、ほとんど、ちょっぴり泣いていました。


『気を付けてね。早く帰ってきてね。ダメだと思ったら、いますぐ帰ってきてもいいよ。』


 らくだの『らくさん』が言いました。


『うん。じゃあ、出発!』


 「くまさん」が合図をしました。


 「たらい」を支えていたみんなは、手を放しました。


 こうして「くまさん」たちは、ついに『宇宙』に向かって旅立ったのです。


 お空の上には、たくさんのお星さまが輝いていました。


ところがこの時、川向こうのおうちの屋根の上から、じっとその様子を見ている影がありました。


 それは、世界中の「ぬいぐるみ」を集めて、一人占めしようと考えている、『魔女アマンダ』だったのです。

 


 

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