第5話  「出発の準備」

会議の終わりに、「ぱっちゃくん」が言いました。


『出発はいつなの?』


『これからすぐだよ。』


「くまさん」が答えました。


『え?すぐ』


『そうさ。「善は急げ」なんだから。「今日できることを明日まで延ばすな」とも言うしね。』


『「くまさん」は学があるね。』


「ぱっちゃくん」が感心しました。


『でも、「しっくん」は、昔からしょっちゅう言っていたよ。「明日できる事を今日するな」って』


「こんちゃんが」そう言いました。


『「しっくん」は、さかさまの事を言うのが好きなんだ。』


「くまさん」が言いました。


『でも、もっとよく準備しないと、心配だな。』


心配症(しんぱいしょう)の「らくさん」がぽつんと言いました。


『お薬は早いほうが良いにきまってるよ。それに「明日の事は明日案じよ」なんだ。』


「くまさん」が、また、むつかしいことを言いました。

 

『それなに?』


「ぱっちゃくん」が聞きました。


『よくわからないけど、たぶん、あんまり考えても、むだってことだよ。』


『ぼくはいつも考えないよ。「くまさん」ほど学もないしな。』


「ぱっちゃくん」が、また泣きそうになって言いました。


『ぱっちゃくん、泣いちゃだめだよ。「しっくん」がいつもそう言ってる。』


『うん。泣かない。』


「ぱっちゃくん」が涙を手で拭きながら言いました。


『入院する前に、「しっくん」が言ってた。「こうと死してそうくにらる」なんだ。』


「くまさん」が、思いっきりむつかしいことを言いました。


でも、実は「くまさん」も、この意味は、さっぱりわかっていませんでした。


なんか、かっこよさそうだったから、言ってみたのです。


『おお!「くまさん」すごくむつかしい事、知ってるねえ。』


みんなが、またまた感心しました。


「くまさん」は、かなり、また、誇らしげでした。


誰も意味を聞かなかったので、助かったのですけれどね。


本当は「狡兎死して走狗烹らる」なんだけれど、まあ、それが「しっくん」の気持ちだったんだね。大きくなったら調べてみようね。


さて、そこでみんなは実行に取りかかったのです。


まず、お風呂場に「たらい」を取りに行きました。


でも、お風呂場のドアを開けるためには、少し高いところにある「ノブ」を回さないといけません。


ところが、誰もそこまで手が届きませんでした。


大きな「もーくん」が言いました。


『ぼくの上に乗って。』


そこで、「もーくん」のうえに「わんさん」が乗り、その上に「ぱっちゃくん」が乗り、そのまた上に「くまさん」が乗りました。


すると、「くまさん」の器用なお耳が、ドアのノブに届いたのです。


「くまさん」がドアを開けました。


そうして、みんなでお風呂場に入りました。


お風呂場のなかに、普通の「洗面器」がありました。


『これだ!』


「ぱっちゃくん」が叫びました。


『ちがうよ、「ぱっちゃくん」それは「洗面器」だよ。「たらい」はあれだよ。』


くまさんが、お耳で柱の上をさしました。


『おお。でっかい!』


みんながびっくりしたように、言いました。


柱に、大きな「たらい」がぶら下がっていたのです。


『おろさなくちゃね。でも重たそうだなあ。』


『くまさんのお耳では無理そうだなあ。』


みんなが言いました。


『ううん。』


「くまさん」も考えました。


『なら、こんどは「もーくん」に乗っかる順番を変えよう。』


「くまさん」が言いました。


そこで、一番下は、やっぱり、一番どかっとしている「もーくん」で、その上に「わんさん」、その上に「しろくまくん」が乗って、一番上に腕力の強い「ぱっちゃくん」が乗りました。


『そら、「ぱっちゃくん」、「たらい」を落として!あとちょっと、がんばれ!』

みんなが声援をおくりました。


「ぱっちゃくん」は一生けん命に手をのばして、ついに「たらい」をつかみ、ひっかっかっていた「くぎ」から外しました。


「やったあ!」


みんなが叫びました。


「たらい」が、ごろごろと、お風呂場の床にころがったのです。





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