第40話 女子高生の作り方
恒星とは元素工場である。
宇宙はかつて、無だった。そこから、ゆらぎによって
要約してみよう。
地球から500光年も離れた赤色巨星で女子高生が死闘に巻き込まれているのはすなわち、宇宙がビックバンを起こしたせいである、と。
「はい、先輩!」
◇
金属生命体とは、
だから、彼女らは単なる一挙動ですら、極限の宇宙物理学の体現である。
刃の腕が振り下ろされた。それは、
「―――!」
都市の外壁にとりついた金属生命体群。その最後の1体を撃破した鶫は、息をついた。全身の状態をチェック。損害は軽微。体温がかなり上昇してこそいるが許容範囲内である。
そこまで確認した彼女はようやく笑みを浮かべ、傍らでこちらを心配そうに見てくる先輩へと顔を向けた。
「鶫……」
「大丈夫です。先輩。まだまだ私、元気ですから」
へたくそなガッツポーズを取る後輩に噴き出す遥。この超生命体は時折こういうことをする。彼女のおかげで、遥はどれほど救われただろうか。
「よろしい。
こちらは片付いたようだが、どうするかね?」
「敵の頭を潰しましょう。かなり危険ですが」
「うむ。止むを得まい」
頷く遥。こういうことはプロフェッショナルに任せるのが一番であろう。何しろ1万2千年のキャリアである。
先輩の同意を得た後輩は、自らの案を実行するべくもふもふたちへの回線を開いた。
◇
「―――
その一報に、室内は歓声に沸いた。
「……ふぅ。助かった、か」
「賭けには勝ちましたな」
居留区の中枢にて、額から汗をぬぐう市長。危険な試みだったがうまく行くとは。素晴らしい。まだ攻め寄せた敵勢全体を退けたわけではないにせよ、1体の金属生命体がまさかここまでやってくれるとは。
「例の金属生命体―――あ、いえ、地球人より入電です」
「こちらに回せ」
オペレーターの言い換えた気持ちは市長にも分かった。金属生命体に助けられたと思うよりは、あの異種族の少女に救われたと思う方が気持ちは楽である。しかしよくもまあ、この混乱で彼女らは合流できたものだが。
送りつけられた文面。わざわざ地球のフォントで『
「……これは」
「興味深い提案です。試してみる価値はあるかと」
市長に返したのは教授である。この黒光りする昆虫型生命体は、またもや面白そうな顔をしていた。
さらに助け舟を出したのは、
『地球には何でも、「毒を喰らわば皿まで」という格言があるそうですが』
「一体どういう意味―――ああいや、想像がついたぞ。言わなくてよろしい。
―――よかろう、確かに我々は毒を喰ってしまった身だ。皿まで喰っても大差あるまい」
そして市長は一拍を置くと、命令を下した。
「恒星内部の地図を地球人に提供しろ。これまでの戦術情報、その他作戦遂行に必要なものもすべてだ」
『了解致しました』
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