第11話西村さん 1 挨拶
二年後、友香はH市内のホテルWに再就職しました。
十一月の初めでした。
今度はフロントと食事サービスの兼業です。
そこでも、年下の同僚と出会います。
初めての朝食会場担当の日のことです。
「あっ、初めましてー!
二十二歳の彼女は友香はより三ヶ月早い入社ではありますが、ホテルの経験はこの職場が初めてです。
籍では友香が後輩であり、実質は先輩になります。
友香は臆することのないよう意識して、微笑みました。
「加東友香です。よろしくお願いします!」
友香の印象では、西村は顔立ちのようにふんわりとした雰囲気を纏い、おっとりとした女の子だということです。
彼女も友香と同じくフロントと食事サービスの兼業なので、接する機会は多いでしょう。
友香はこれまで挨拶してきた人たちに、健康であるように自分を魅せることに努めました。
西村にも決して悟らせるわけにはいきません。
おっとりした人は、理屈ではなく勘で物事を察知することが多いからです。
それは、友香も同じでした。
友香はこれまでは慌てることのなく、勘を頼りに物事を判断していました。
西村と似た性格だから、彼女の勘が鋭いであろうことをこのときすでに見抜いていました。
そして後にそれは正しかったと判明します。
何はともあれ、挨拶はその人の印象を決める唯一の手段です。
後の言動で評価が上下することありますが、挨拶ほど印象を固定付けるものは存在しません。
余談にはなりますが、全国各地にてホテル業界の従業員を集め、挨拶の講習会を頻繁に行うことにも意味があります。
笑顔のある挨拶で、そのホテル、そのホテルマンをお客さまに大好きになっていただくこと。最終的には一見さまをリピーターに繋げることです。
ホテル業に限らず、どの仕事でもプライベートでもつねに心掛けたいものです。
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