これは寿司でしゅ

高瀬ユキカズ

これは寿司でしゅ

「す、すきでしゅ! つ、つきあってくだひゃい!」

 なんだか舌っ足らずな言葉で告白してきたのは同じクラスの愛美だ。

 話があるからと言われて屋上に呼び出されていた。ちょっと小柄な愛美まなみにひそかな思いを寄せていたから心臓が飛び跳ねた。

 だが、愛美が俺に突きつけているのはチョコレートではない。

 桶。

 そうだ、桶だ。

 愛美は俺に平べったい桶を突きつけている。

 中には色とりどりの何かが詰まっている。

 俺は桶から視線を外し、愛美に目を向けた。

「今日は二月十四日だよな」

「そ、そうだね」

「普通は女子から男子にチョコレートを渡す日だよな」

「そ、そうだね」

「で、これは?」

 俺と愛美は桶に目を向ける。

 少しの沈黙が訪れる。

 俺は同じセリフを繰り返した。

「で、これは?」

「す、寿司でしゅ」

 桶の中にはマグロ、はまち、サーモン、えび、いくら、うに、玉子、etc。

 色とりどりの寿司が詰まっていた。どう見ても寿司だ。桶にはびっしりと握り寿司が詰めこまれていた。

「お前、さっき俺に好きですって言ったんだよな?」

「ち、違うよ。寿司ですって言ったんだよ」

「付き合ってくださいって言ったよな?」

「つ、つつき合ってください、お寿司を。かな?」

「つまり、最初の台詞は、『寿司です。つつき合ってください』とそう言ったわけで、つまりは俺の聞き間違いだと?」

「そうなる……かな? だって、大樹だいきくん、お寿司好きだって言ってたじゃない。いっしょに屋上でお昼を食べようと思ってさ。頑張って作ったんだよ」

 愛美は一生懸命、お弁当の代わりにお寿司を握ったと言う。

 なら、食べないわけにはいかない。いっしょに屋上で寿司を食べることにした。

 まずは、大好きなマグロから。ぱくっと一口で口に入れる。

 だが――

 ぶほっ。思わず吐き出してしまった。

「シャリが……ホワイトチョコ……。ま、マグロにホワイトチョコって……」

 横では愛美が顔を真っ赤にしていた。

 耳元で愛美が囁いた。


 ――す、好きです。付き合ってください。

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これは寿司でしゅ 高瀬ユキカズ @yukikazu

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