寿司界隈で異世界転移ノベルが流行った場合に定番テンプレとなりそうなオープニング

momoyama

寿司界隈で異世界転移ノベルが流行った場合に定番テンプレとなりそうなオープニング

「ここはどこだ? 俺はさっき、回転寿司のプリンに轢かれて死んだはずだ」

「いらっしゃいませ、天界へようこそ。貴方は転生のチャンスを得てここへやってきたのです」

「女神……? なぁあんた、チャンスって何なんだ」

「貴方はプリンに手を伸ばした子供をかばって死にました。その尊き心に免じて外の世界へ転移する権利を得ました」

「ほ、本当か?」

「しかもサービスとして、チートが与えられます。ここで申請したチートはなんでも入手できますよ」

「……なんでも? 本当になんでも頼めるんだな?」

「無論です」

「じゃあまず、たまごから貰おう。これを食べなきゃ板前の腕は分からない」

「まいどっ」

「モグモグ。うん、いいふっくら感だ。じゃあ次は、イカを」

「はいよっ」

「これも歯ごたえが良い。マグロもちょうだい」

「今日のマグロはひと際活きが良いよっ!」

「本当だ、とても旨い。大トロも頼みたいが、後のお楽しみにしよう」

「次は何にします?」

「海老、蛸、鮭——あ、ウニも食べたいな。穴子も捨てがたい。それと……」


=====

「ふぅ、食った食った。寿司屋に入ってすぐ轢かれたからおなかが減ってたんだ」

「私の握りチート、お気に召したようでなによりです」

「よし。満足したしさっさと外の世界へ行くかー」

「……あらあら、タダでチートを貰えると思いました? ちゃんと代償は払ってもらいますよ」

「え。ちょ、ちょっと待て、そんなの聞いてないぞ!」

「どんな物も対価は必要。天界も日本と変わりませんよ」

「くっ。一体チートの対価はなんなんだ……」

「4760円です」

「あ、あぁ……。値段出さない系の寿司屋だったのか。じゃあ1万円で」

「はい、お釣りがこれね。またお越しくだせぇませーッ!」


 こうして俺は、天界から転移した。

 転移した先は俺の自宅。外の世界とは、寿司屋の外の世界って意味らしい。


 女神の寿司は本当にうまかった。給料日が来たら、またプリンに轢かれて寿司を食べに行きたい。

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