四星、激突す

六畳のえる

四星、激突す

「ねえ、ウィード」

「なんだ、グリンテ」


 コードネームで呼び合う。深夜、正義の味方として活動する俺達4人、「四星スーシン」のルール。


「今日はアタシ、ピックと組むわ」

「じゃあ俺はレーンとだな」

 回転寿司の裏の空き地。今日もまた、修行を兼ねたバトルが始まる。



「アタシから行くわよ!」


 グリンテが手を上にかざす。程なく地面から緑茶グリーンティーが噴き出し、高波を作った。

 4人が持つ固有ネタアビリティ。彼女のそれは緑茶を自在に操る「粉末茶ティーウォール」。


「飲まれろ!」

 高波は、今日の相棒、レーン目掛けて滝のように落ちてきた。彼は、ポケットに両手を入れながら、クックックと笑う。


「僕の突進に勝てるかい?」

 ギンッと目を見開き、左足でアスファルトを蹴る。ドンッという人間の足から出たとは思えない音とともに、目にも留まらぬ速さで動き、その高波を突破した。


 彼の固有ネタアビリティ突撃アサルト。頼んだ人に寿司を流すオーダーレーンのように、超速で移動する。


「ヒャッハー! 弾けろや!」


 ギャリン!


 その突撃アサルトからの蹴りを、剣の柄で止めるピック。


「やるねえ、ピック」

「読みやすいんだよ、お前の軌道は」

 固有ネタアビリティ高楊枝ハイソード。巨大な爪楊枝トゥースピックの二刀流。


「ウィード、僕ごと包め!」

「あいよ」


 そして俺は両手を前に翳す。やがて、2人なら余裕で包めるほどの海苔シーウィードが現れた。


固有ネタアビリティ軍艦バトルシップのお出ましだ」


 2人に向かって飛んでいく海苔、しかしピックがそれを斬り破り、勢いそのままこちらに突進してくる。


「せいっ!」

「うおっ!」

 海苔を羽にして飛び、なんとか避けた。


「さて、ここから――」

「そこまで!」


 地面が生姜ガリ色になり、羽が消えて地面に叩きつけられる。


「ぐえっ!」

「またやってる!」

「……やあ、ジンジャー」


 彼女が俺達の上司。固有ネタアビリティの無効化、「口直しゼロ」を使いこなす。


「明日の準備は! 正義の味方なんて1円にもならないんだから、昼は回転寿司で稼いでもらわないと、首も手も回らないわよ!」

「はいはい……」


 回るのは寿司だけで十分だな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

四星、激突す 六畳のえる @rokujo_noel

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ