第2話
珠ちゃんの声で目がさめる。
「ヒトミさん、ヒトミさん、朝ごはん食べないんですか?あと1時間位で着きますよ。もう起きたほうがいいですよぉー」
そう、顔はパンパンに張っている。気圧のせいか、睡眠のとりすぎか。
成田発21時30分発ANA1052便ホノルル行き。
集合、カウンター前20時ちょうど、集まったみんなが、みんなノーメイク。
でも、こんだけちょっと見いい女達が総勢24人、豪快すぎる。どうなることやら、4泊6日の団体旅行、持ってるバックがビトンにプラダのオンパレードがホステス語る。
憂鬱、憂鬱ってイヤなら来なきゃいいはずだけど、私、なぜだか笑顔でボーディングパス。ああ、また、いつものパターン、わかっちゃいるけど止められない。断る理由なければウソもなし、おまけに断るタイミングもなーしって事でだらだら、本日の旅立ちの時来たる。
★
六本木のオネーちゃんたちの修学旅行ってカンジで、あとは店長とか会社の経理のおばさんとかが参加している。バイト系のボーイ君たちは不参加、一番楽しみにしていた社長は奥さん連れて遅れて参加、変な団体。
社員に対する慰労?サービスって事で半額会社負担になってるけど本当って?
どうやらホステス一同1人10万位出してるんだけど、今やハワイなんて沖縄より安いじゃん、誰かボッてんじゃないのーって思えば、本当のところは社長の奥さんがやってる小さな旅行代理店を儲けさせるためっていう噂。
建前的には人が資本「水」業界、いわゆるホステス次第で浮いたり沈んだりするこの世界、仲間意識、連帯感を私たちに持たせてドラバーユを未然に防ぐのもこの旅行の目的なんて言ってるけど。
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こうやって、あらためてこの店の女の子見てみると愕然、私が一番、いや二番とにかくトップクラスにゃ間違いなし、指名の数じゃなくて、恐ろしいかな「歳」のこと。
平均年齢、私がいなけりゃ〇・二ポイント下がる状況のよう。
これ、珠ちゃんに言ったらあっけらかんとして、
「歳なんて関係ないですよー!」
なんぞ、まったく嬉しいこと、言ってくれる。
「人生は10代、20代、30代、40代、それぞれの時代に青春があるんですよ。気を若く、夢をもって、がんばれば魅力的な女になれんですぅ!やる気やる気」
なるほど、夢とやる気が若さの秘訣か。
「男だって20代だけど全然オヤジってヤツもいれば、50歳だけど友達に彼氏OKって人とか、いろいろいるじゃないですか!!!そうそう、柴崎コウと広末は35で、キョンキョンだってもう50でしょ。ぜんぜん魅力満載中ですよー」
確かに、こんな小娘に、それもハワイ行きの機上で元気づけられちゃったりして、妙に感心しつつも溜息まじりに窓をのぞけば眼下に広がる太平洋、ポッカリ浮かぶ綿菓子みたいな浮浪雲。
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さすがにこの旅行、団体行動はなし。
わがまま娘も多いし、ホテルについてその日の夕ごはん、と最後の夕ごはんの二回だけ。オプションでゴルフとかいろいろ。もちろん、私はノーエントリー。
精神衛生上、非常に助かる訳で、ブランドものあさりに行く組あり、観光系ドライブあり、で、私は、ちょっと前までサーファーガール。サンディビーチでボディボードでもやろうかなって、ホテルのロビーでレンタカーを一応手配した。
でも、とりあえず、ホテルのプールでゆっくり日焼けもありの何しようって、と年齢順で私からシャワーを浴びてこれからの行動を考えた。
まぁ、でも、ひとり意固地に単独行動もあまりに子供で嘆かわしいって、大人気取って一応、ルームメートにも相談するかと、シャワーを出る。
ホテルの部屋は三人部屋。
メンバーは、いつもの「送り」のご一緒、珠ちゃんと純ちゃんの店の中では顔見知り組み。この旅行あと四泊か、フゥーってため息、でも、まぁ今チェックインしたばかりだけど。聞けば、こいつらもボーッとしたいのと節約でオプション計画なし。
「別に、なーんにも考えてないですぅーって、ヒトミさんにお任せまーす」って。
気がつきゃ成り行き上に、またまた、ノーと言えずに笑顔で仲良し三人組のチームリーダーに就任してしまった。
★
珠ちゃんは週3日の出勤、本業一応女優、でも飯は食えない卵の卵。
もう一人は渋谷の英会話学校事務、目標オーストラリア留学、親には内緒のホステス稼業、カラオケバイトって嘘ついてる純ちゃん。
で、私、もとOL。なんか成り行きってカンジでホステスしている二十八才。
三人あらためて、変な自己紹介を重ねつつ、初日は車飛ばして、ボディーボードのサンディビーチに行くことに決定。少々眠気をガマンして時差ぼけ解消、遅めのランチはマック片手にビーチに車を走らせた。
私がインストラクターで2人が生徒。
やっぱりきれいなビーチは、ホーント気持ちいい、日本人もぜんぜんいないし。
とろそうに見えた珠ちゃん、結構運動神経がいいんでビックリしまくり。
2日目、やっぱりサンディビーチでボード三昧。すっかり、二人ははまった様子だった。
とりあえず、3人とも結構いい色に焼けちゃって、魅て!いい女ってフェロモン発散中。
でも、こんな焼けていいのかしら、六本木ホステスと言うよりは健康的なスポーツクラブのインストラクターの雰囲気は結構目立って指名の数も増えるかもって、みんなで話してたりして。
それにしても、健康ビーチガールに急変身の珠ちゃん一応、アンタ、女優志望でしょ、事務所大丈夫ってカンジの小麦色だった。
なんだ、かんだで楽しく時間はたっていく。これも、やっぱりハワイの気候、暑いけれども熱くない、爽やかに吹くトレードウィンドのおかげか。がーって、ワインを飲んでテレビ見て、ワイワイ騒げば、10時過ぎにはビーチスポーツの疲れに日頃の疲れも重なってバタンキュウ。
しっかり8時間の睡眠、爽やかな朝。開けっぱなしのテラスから、毎朝、真っ白の小鳥が入ってきて目をさますって、この超健康的六本木のホステスにあるまじき生活環境に、やっぱり、私も女の子、こういうとろは感動しちゃう、珠ちゃん、純ちゃん、二人の「やっぱ、来てよかたねぇー」に「ホントだねぇー」と答える私もここにいる。
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