ピンクの秘密


私はピンク。本来なら紅一点のはずの、モモイロ吐息。


なんでかしらねー、気づかないかしらねー。

なんでメンバー全員、私が男で、女装がすきな「男の」って信じてるのよーーー。


そりゃぁ確かに最初に会った時に、そう自己申告したわよ。

でもさ、そこには理由を話せなかった苦しい胸の内があるとか

もう少し想像してもいいと思うのよ。


そう、私は正真正銘、おんな、なんですけどっ!


事の発端は、あれよ、宝塚歌劇団のミッションだったのよ。

演技力のテストで、どこまで女だとバレずに暮らしていけるか。


ええ、見事にトップ通過だったわよ。

だって、いまだに、誰も私を女だと思ってないんだもの。


しかも、地球の平和のためにがんばっていたりしたら

もうヒッコミもつかないじゃないの! 

仕方ないから、去年あきらめて歌劇団は退団したわよ。

ああ、トップであのきらびやかな階段を、羽つけて降りてきたかったわ。


🍑


私がここを離れられなくなった理由が、目の前にいるのよ。

ブルー。ああ、いぶし銀のブルー。

せつない横顔。渋い仕草。何もかもがクールですてき!


ってあこがれていたら、なんてことかしら。

あの人、足繁くグリーン村に通っているのよ。

もうね、グリーンのへなちょこなこたつ部屋の窓にへばりついて

うらやましそうに見つめてるの。ちょっ、よだれ!


なのに、そのギャップに、いつしかキュンとしちゃって。

っもう、私までグリーン村ばっかり来てしまってるわ。


さっき、川を何かが流れていったわ。

桃じゃなかったわ。優雅にどんぶらこって感じじゃなくて

高速回転のブーメランみたいな、緑の物体。


……、たぶん、きゅうりね。

上流の家から下流の家に受け渡されたのね。

家の格じゃなくて、川の上流から、下流っていう自然な流れのことね。


この村ではよくある光景よ。

「ちょっと醤油かしてー」って叫ぶと

川からぴゅーってお盆に乗って流れてくる。

ってことは、借りるのは一方的に上流家庭からなのね。

人生の縮図ね。後でお返ししてるのかしら。


ああ、それにしても世の中は不平等よね。

おーい、少しは振り向いたらどうなのよー。

なぜこの(美しい)私を見破れないの? ブルーめ。


どう見たって、お寿司ならガリじゃなく、輝くサーモンでしょ、私。

なにせ私の正体は、一本足打法の「フラミンゴ」なのよ!


いいわね、いくわよ!



<つづく>



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る