第17話 問題解決?
ラテってカフェラテのことだよね。えっと珈琲にミルクたっぷりってことかな?……違う!そうじゃなくって!また誤魔化された!
パパだけじゃなくママとの子って、隠し子っていうか完全に兄妹?
そう思いながら待っていると、なんだか本格的なカシャカシャという音が聞こえて、それから珈琲の芳ばしい香りがした。
「はい。お待たせ。」
「わぁ。可愛い。」
目の前に置いてくれたのには四つ葉のクローバーのラテアートがされていた。
本格的な機械なんてないはずなのに、こういうことをサラッと出来ちゃうのがやっぱりさ。そうやって何人の女の子を…。
深読みしてなんとなく素直に喜べない。
「幸せなココにピッタリだろ?」
柔らかな笑顔を向けてくれるケイちゃんに、これで女の子を騙してるんでしょって思ったことを少しだけ申し訳なく思う。
「何?嫌だった?」
ふるふると首を振る私の頭がまたグリグリされた。
「料理人が一番嬉しいこと何か分かる?」
急になんだろう…。
「うーん。料理が上手に出来た時?」
フッと息を漏らしたケイちゃんがまた頭をグリグリする。そのまま胸の中に引き寄せられグリグリされたまま上から声が降ってきた。どんな表情かはまったく分からないけど優しい声。
「作った料理を美味しそうに食べてくれた時。だからココは難しく考えないで食べたらいいんだよ。」
またケイちゃんに優しい言葉をかけてもらってる。いつも私はケイちゃんにもらってばかりだ。私は何をしたらいいんだろう。
遊び人ー!ってついさっきまで思ってたのにケイちゃんは幸せなのかなって疑問がまた頭の中にやってきて、甘いはずのレアチーズの味がよく分からなくなってしまった。
その上、パパとママとの子ならどうして隠し子なんて言ったんだろう。どうして子供の頃は一緒に暮らさなかったんだろう。って別の疑問まで出てきてどうしていいか分からなかった。
部屋に行くと鞄に入れっぱなしだったスマホに拓真からLINEがきていた。
『話したいから連絡欲しい。』
何度か着信履歴も残ってて連絡をくれてたみたい。
問題てんこ盛りで頭はパニック寸前。拓真と喧嘩別れしたことは正直忘れてた。
でも…パパはいい加減だからなぁ。発言がいちいち信用ならない!とりあえず隠し子問題は置いておいて拓真のこと考えなくっちゃ。
あんな別れ方で電話しにくいなぁと思いつつもママとの電話までしてもらって励ましてもらったんだからと決心してスマホを握った。
「もしもし。心愛だけど…。」
「おう。あの…。ゴメン。」
「そんな…。こっちこそまた帰っちゃって。」
沈黙が流れた。電話の沈黙っていたたまれない。会うといつも馬鹿ばっかりやってる佐藤仲間。こういう真面目な雰囲気は居心地が悪かった。
「優奈に…怒られてよ。」
「え?何?」
「優奈に怒られたんだ。心愛が大事なら見守ってやれって。」
大事って…。私だってみんなのこと大事だって思ってる。優ちゃん…。
思わぬ優ちゃんの優しさに触れて涙が出そうになる。
「でも私こそお兄ちゃん…というか家族と距離が近過ぎて変なのかなって本当は思ってるの。だから…。」
「違うだろ。そこも含めて心愛だろ。」
拓真…。そこも含めて私?それで本当にいいのかな。
まさか拓真にそんなことを言われるとは思ってなくて、なんて返事したらいいか分からない。
「だから俺はもちろん優奈も陽太も心愛に何があっても…俺たちは変わらず心愛の味方だから。」
「ヤダ…。どうしちゃったの?調子狂うよぉ。」
優ちゃんどころか拓真まで。それに家に送ってくれた陽太も似たようなことを言ってくれた。なんだろう。私がモヤモヤして落ち込んでいるのを察知してくれたのかな。
「バーカ。人がせっかく真面目に話してるのに茶化すなよ。」
電話口から少し照れたような拓真の声が聞こえる。
「うん。ゴメン。ありがとう。嬉しいよ。やっぱり持つべきものは友達だね!」
「お、おう!…そうだな。」
「じゃ。また集まろうね。ありがとう」と電話を切るとなんだか心が温かくなっていた。
そうだ。こうやって一つずつ解決していかなきゃ。
それに冷静になれば分かる。パパは適当なことばっかり言うんだ。どこまで本当か分からないのなんてしょっちゅう。だから自分の子どもはママにとっても子どもって思考回路でもおかしくない。な〜んだ。この問題は簡単だった。
また一つ問題が解決して私は意気揚々とお風呂に行くことにした。
電話を切った拓真は電話の向こう側で「友達かー。まぁそりゃそうだな」と言いつつもハーッとため息をついてうなだれていた。
次の日の朝。ケイちゃんはまた思いがけないことを言った。
「俺も今日行くから。」
「え?」
「優ちゃんだっけ?お兄ちゃんとしてココの友達に会っておきたい。」
「え。」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど。」
「じゃ決定。ランチおごるから俺のバイト先に二人で来て。」
それだけ言うとケイちゃんは先に出掛けて行ってしまった。
バイト先って…また忘れてた「ココちゃん」がいるんだよね。会ってみたいけど…できればこのまま忘れていたかったなぁ。
そう思ってもケイちゃんは行っちゃったし優ちゃんに今日の予定変更LINEを送ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます