第3話

 さちお君はももこ号と連れ立って、ルンルン気分で、駐車場に一緒に行った。

 あるぞ、ムーンロック・メタリックのカッコイイ車体が。さぞやももこ号、嬉しそうな顔をしているだろうと思い、エンジンを始動して、電動ルーフをフル・オープンにする。助手席のドアを開けて、紳士なさちお君、ももこ号をエスコートした、と、ここまで、あくまでここまでは良かった。

 …水は方円の器に従うとは言うけど、ももこ号は牛さん、そうはいきません。助手席に乗るまでが、先ず一苦労。ただでさえ狭い助手席に、ももこ号の豊満なボディーは今にもはち切れそうである。加えて、座高の関係上、なんと言えば良いのか…。これじゃあ、雨が降ってもルーフを閉められない…。だって、だって、ストッキングを被った変な牛さんになっちゃう…絶対…。

「ねぇ、この車って、小さくない…?」

(来た…!空気の色が微妙に湿っぽいぞ)

 さちお君、滅多に使わない頭をフル回転させた。沈黙は金、てな訳にはいかない。で、その答えが、

「これ、スポーツカーだから、こじんまりと作られてるんだよ。それに、座席が体にぴったりフィットするのがいいんだよ。」

という、当たり障りの無いもの。

 30%程納得したらしきももこ号、さらに聞いてくる。

「ねぇ、でも、やっぱり小さくない?この座席…?」

 …言わないで…。確かにももこ号の体のかなりの部位が、はみ出している。どうする?

「ええ~と、つぼ刺激の機能が…(アホか)」

 しかし、この珍答で、50%程納得してくれるから、何ていい子なの、ももこ号!

「ねぇ、微妙に左に傾いてない、この車…?」

(とんでも御座いません!)

「いや、これは助手席サポートシステムさ。乗り降りしやすいだろ。(ここまで言ってしまうと、もぉー後には戻れない)」

「そうなんだ!凄いね、この車!。」


 理由は良く判らないけど、これで、完全に納得してくれたももこ号。愛する牛さんを前に、こんなヤバイ思いはもぉーしたくない。この日のドライブの後で、さちお君は、車を買い替える事を決意したのです。

 と言う事で、快適ドライブの指南役は、大きさ、文句なし!乗り心地、う~ん、どうかなぁ、てな感じの4t車になりました。ちなみに、後部荷台、じゃなく座席、でもないか、座敷の幌、いや、ルーフは電動でフルオープンに出来るのだ。凄いだろ。外装もスタイリッシュに!この愛車で、何かと記念日を作っては、あちこち出歩いたのだ。

 そしていつしか、ももこ号も又、さちお君に恋していたのである。

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