第2話

 チャンスは突然やってくる♪

 アルプスに入って来たのだ、ももこ号が。そして、彼女から声を掛けてきた!

「いつもここで、お仕事してるんですか?」

「ええ、まぁ(何て毛艶がいいの…)」

「毎日いらしてるんですね。」

「ええ、定休日以外は(何言ってんの、僕)」

「あんまり邪魔したら申し訳ないから、消えますね、私。」

「消えるなんて!どうぞ座って!」

 さちお君、大慌てで反対側の椅子に置いた荷物を整理し始める。

「もう少し、お話しません?実は僕」…こうなったら、奥の手だ!「俳優なんです。」

 ももこ号、きょとんとした顔で、

「そうなんですね。よくわからないんですけれども、何かプログラムを作っていらっしゃるのかって。勝手に想像してしまいました。」

 さちお君、被弾。あれ、「俳優」という単語にビビッとこないのね・・・。

「はぁ、まあ世の中にはいろいろなお仕事がありますしねぇ。」

と言って、後が続かない。これはピンチ!

「なんだか、面白い方ですね。」

 ももこ号が笑った。ホントよくわからないけれども、雰囲気は悪くないぞ。だいぶ気持ちが落ち着いてきた。よくみると鼻息で銀糸の鼻輪が微妙に曇る。なんてセクシー♡。

「ここ、座っていいですか?」

「はい、貴方の為に空けたんです。どうぞ。」


 この日から、さちお君とももこ号の友達としてのお付き合いが始まったわけである。

 アルプスは仕事の場所から、さちお君が愛を育む場所へと変貌した。無論、プロデューサーが呼ばれる事はコトゴトク無くなり、たまにやってきたとしても、要件が済めばすぐに開放する、いや、追い返す。と言うか、来ないで!!前までは、それなりに無駄話に付き合ってもらっていたのだが、思い立った瞬間は既に過去なのです。

 話が出来る環境さえ整えば、もはやさちお君、怖いもの知らずである。と言うか、自己主張する事の重要性は、俳優ですもの、よくわかっています。ユーモアのセンスがあるかどうかはびみょうだけれども、そう、雄弁は銀!頑張るぞ!


 そしていつしか、さちお君とももこ号はドライブに行く程の仲になっていました。

 ちなみに、高原をドライブするのがいつものコース。

 ただ、ここだけの話し、車に関して、チョイとヤバイ問題が生じかけた事があったのだ。

 それは、初めて、思い切ってドライブに誘った日の事である。

 今まではずっと、さちお君は喫茶店「アルプス」でもも子号とのお話に明け暮れ、それとなく、というか実は思いっきり熱い思いを語っていました。ところで、ある程度心を許した女性が、その許した気持ちを表す一つの手段として、「」と言う事があげられる(かもしれない・・・)。ももこ号も、さちお君と話しをしていて、とても楽しい気分になるから、ドライブに誘われた時に、行ってみようかなって考えたわけである。その瞬間のさちお君の喜びようときたら、想像のしようがないってものです。もっとも、そんな気分にさせたのは、何回目のアルプスデートの時だったっけ?十…数回目だったはず。お堅い牛さん、身持ちのいい牛さん、とってもス・テ・キ。

 当日は、とってもいい天気。春の陽気が清清しい。さちお君ご自慢の2人乗り軽量コンパクトスポーツカー、タナダS2000は実はオープンカー。滅多に開かない幌を今日ばかりは全開にしましょう。さぞや快適なドライブが楽しめる筈!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る