見習い寿司召喚士ハナヤ がんばります!

雪白 瑚葉

見習い寿司召喚士ハナヤ がんばります!

 とある異世界、時は寿司戦国時代…寿司を食わざるは人にあらず…今日の寿司より明日の寿司…金融街の靴磨きの少年もおすすめの寿司屋を語り出す…そんな時代のお話。


 まだほの暗い、ある寂れた寿司屋の厨房。

 寿司召喚士ハナヤは口を真一文字に結び、両手に杖を握りしめ、すらすらと空中に寿司召喚式を描く。


「いでよっ!ハマチ!」

 仕上げに杖の先でトン、と式を小突くと、召喚式から寿司が産まれた。


「やったっ!かんぱちっ!…じゃなかったっ!かんぺきっ!」

「お嬢、ダメです。失敗でさぁ。」

 カウンター席に座った中年の男が溜息をついてそう言った。


「お嬢、召喚式を間違えましたね。コイツは代用魚シイラの寿司です。こんな未熟な腕で、高級なネタを競う天下一寿司舞踏会に出場するなんてもってのほかです。」

「あらら…。」

「この寿司も…もぐもぐ…とてもお客に出せたもんじゃありやせんぜ…。骨が刺さる…。」


「そんなぁ…。」

「残念ですがまだまだ修行が足りやせんね…。天下一寿司舞踏会は棄権した方が…。」


 亡き父から譲り受けた小さな寿司屋、見習い寿司召喚士でありながらも、熟練の召喚士マサの協力で、なんとか切り盛りしてきたのだ。天下一寿司舞踏会は明日に迫っていた。

「やるしか…ない!」


 *


 天下一寿司舞踏会─一般的に高級なものほど召喚は難しいとされる。故に召喚士の技量を競うため、高級なものを召喚する腕を競う大会である。

「あわわ…さすが天下一寿司舞踏会、すごい人だ…。恥ずかしいけど、失敗するのはもっと恥ずかしいから初級者向けの玉子を召喚しよっと…。」

 ハナヤは震える手で玉子の召喚式を組み、杖先でトン、と式を小突く。

「いでよっ!玉子!」


 ニョキニョキ、どすん!


「いてて…あれ?ここは天下一寿司舞踏会の会場?」

「うわーっ!間違えて王子様を召喚しちゃった!」


 一番高級なもの、ということで、物議を醸したものの天下一寿司舞踏会はハナヤが優勝した。


めでたしめでたし。

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見習い寿司召喚士ハナヤ がんばります! 雪白 瑚葉 @yukishiro_konoha

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