★★★――フェイス/オフ(1997年)

 お互いの顔を入れ替えられたFBI捜査官と凶悪なテロリストの死闘を描くバイオレンスアクション巨編。


 監督は「レッドクリフ」シリーズ、「ペイチェック 消された記憶 」のジョン・ウー。実は今作が出世作だそうです。


 FBI捜査官のショーン・アーチャーを演じるのは「サブウェイ123 激突」でライダーを演じたジョン・トラボルタ。

 アーチャーが追いかける雇われの凶悪テロリスト、キャスター・トロイを「ザ・ロック」「コン・エアー」「ゴーストライダー」シリーズなど、有名作多数のニコラス・ケイジが演じます。


 さてこの映画、互いの本性と役割が入れ替わるという点に関しては前に紹介したマフィアに潜入した捜査官と警察に潜入したマフィアの内通者の運命を描く「インファナル・アフェア」と同じものがあります。

 しかしこちらは「インファナル・アフェア」と違って純粋なアクションものに近いです。


 それを示すように序盤十分もしない内に、プライベートジェットとヘリやハンヴィーなどの追いかけっこが始まり、ジェット機が施設に突っ込んだと思ったら、今度はクライマックスのような銃撃戦が始まるようなテンポが速い映画です。

 ちなみにここまで三十分かかってません。


 そこからトロイの計画が続いていることを知ったアーチャーはトロイの顔の皮膚を自分に移植し、彼の弟から情報を聞き出そうとするのですが、その手術シーンは精神衛生上の理由ですっ飛ばすのかなと思ったら、まさかの顔の肉を剥がされる衝撃映像をしっかり映すという暴挙に出ます。正直ちょっとグロかったです。


 そして手術によってトロイとなったアーチャーの捜査が始まりますが、顔を剥ぎ取られたトロイも昏睡状態から目覚め、アーチャーとして彼に面会し、その対面から復讐を誓い刑務所から脱獄したアーチャーとトロイの新たな展開が始まります。


 その中で序盤は賛美歌の中ではしゃいでいたトロイも、かつて自分が殺したアーチャーの息子の墓参りを妻とするときは微妙な顔をしたり、捜査官でありながらトロイになりきり、彼の仲間に接触していく中で自分を見失いかけるアーチャーなど、「自分という人間」に対する哲学的テーマが見受けられます。


 特に、劇中中盤で鏡越しに背を向け合い、鏡に映った自分自身の――さらに向こう側にいるお互いを狙い合うトロイとアーチャーの姿が、この作品のテーマを如実に伝えています。


 そういった表には出ないテーマ的な部分以外にも、アクションはスピーディーで銃撃戦は、ひたすら撃って、撃って、撃ちまくり。


 ラストでは飛び去る鳩たちのなかで(ジョン・ウー監督はよく鳩を飛ばすらしい)五人が銃を互いに突きつけあったと思ったら、今度はボートの上の派手で爽快な水上でのアクションが始まるなど、目まぐるしく展開していきます。


 総合的には少し古い映画ですが、他の純粋なエンタメ作品に比べると、哲学的なテーマと銃弾の飛び交うアクションの両立した少し不思議な感じの映画です。

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