三章 『消せない傷をdon't miss it』 その5


 内貴がコミュ能を鍛えるように意識し始めて数日後。

 翌日にはかすみと出かける金曜日の昼休み、教室にかすみがやってきた。


「内貴は居るかな――っと、居た居た」

「あ、ししょ――じゃない、御手洗さん」


 友人と話をしていた内貴は、かすみに振り返った。すると、ここ数日でよく話すようになった男子クラスメイト二人が、からかうように言った。


「おいおい、彼女か?」

「そういや、前にも来てた子だよな。誰?」

「いや、彼女とかじゃないから。知り合い……うん、まぁ、友達……?」


 説明しづらい関係性に言葉に詰まっていると、クラスメイトたちが脇腹を小突いたりしてくる。

 それに対して、かすみは物言いたげに眉を寄せていた。不機嫌、というほどではないようだったが、気になる表情だった。


「それで、少し内貴に用事があるんだが」

「ごめん、御手洗さん。これから一緒にごはん食べにいく約束してるから。食べ終わったらいつもの所に行くから、それじゃダメか?」

「――なに?」


 かすみの視線がすっと細まり、厳しいものになる。このままだとなにを言いだすかわからないと感じた内貴は、クラスメイト二人の背中を押した。


「とりあえずまた、後で!」

「待て、内貴、私の話が――」


 内貴はクラスメイトと一緒に食堂へと急いだ。

 その背後で大きなため息を吐いたかすみは、考え込む様に口元に手をあてて呟く。


「……急にクラスメイトと仲良くしだして……誰かの入れ知恵か……?」


 余計なことをしてくれる、と殺気まじりに呟いたのを、内貴は知る由もなかった……

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