第7話 おレイはナニがいい?
「ね、ね、ね、」
春花が勢いよく飛び付いてきて、彩未はガタンと前につんのめって、椅子にぶつかってしまう。
「春花ぁ、痛いよ」
「ちょっと彩未。ショータなかなかいい感じの子だったね」
「それか…」
「あのあとどうだった?色っぽい事とか無かった?」
「あのさぁ、春花もママも。おかしいよ」
「むぅ。春花さんをおかしい呼ばわりとな?成敗しちゃるわ」
春花のこしょこしょ攻撃に
「やぁめぇてぇ~!!」
と叫ぶと、
「はいはい。じゃれあいはそこまでね」
「「はぁい」」
副部長である、和奏が嗜めると、ピタリと二人は表情を引き締める。
楽器を出してきて、音あわせをしていく。
春花とのじゃれあいはちょうどよい朝のウォーミングアップになった。
休み時間に彩未の机に集まった、舞花と和奏、それに英乃との話題は志望校の事になる。英乃は吹奏楽部ではなくて、バスケ部の部長である。
夏にはたくさんの学校が、学校説明会を行う。日にちが決まっているから、どの学校を選ぶのか考えないといけない。
春花はどうするのかと聞くと、
「私は公立かなぁって、近いし。でも、彩未が行くなら一緒に行ってみようかな~」
「やった!和奏も行かない?」
「行こうかな?他のと重なってなければ」
そうなると視線は英乃に集まる。
「うん。見に行くだけ、行こうかなぁ」
そんな話をしたその日、帰宅すると何とタイムリーにも翔太が惶成大学 高等部の案内のパンフレットを持ってきてくれたのだ。
「翔太!すごい!ありがとう」
「何て事ない」
またニコッを残して、制服姿の翔太は1215室に向かって歩いていった。
「ママ~、翔太がパンフ持ってきてくれた」
「翔くん、気が利くわぁ」
夏には学校説明会があるし、コンクールもあるしなかなかハードなんじゃないかなと、うーむと唸る。
学校説明会と、それから体験授業とか。
さすがに私立の学校のパンフレットは魅力的な事が満載に書いてある。特に惹かれたのは、吹奏楽部が強豪であること。
特にマーチングは全国大会の金賞常連校だった。
京香と相談して7月にある学校説明会と体験授業に参加を申し込む事にしたのだ。
そうやって、しているとまだ何か決まったわけでもないのに進んでいる気がして、満足感が出てくる。
翔太が頼みやすい事もあって、彩未は度々RENでメッセージを送っては、数学の教えを乞うた。
その甲斐があってか!
なんと数学の成績は持ち直してきたのである。
「ママ!みて!」
中間テストの結果を見せれば
「よかったねぇ、彩未。これは翔くんのお蔭ね。お礼でもしなくちゃいけないんじゃない?」
「あ、そうだね…何がいいかなぁ」
「うーん、やっぱり食べ物とか?翔くん甘いものとかも好きだったと思うし」
「ママ、それ小さい頃でしょ?今はわかんないでしょ?」
「それもそうね」
「翔太ママに好み聞いてみたら?」
「そうしてみよっか?」
京香はスマホを操作してメッセージを送っている。
「彩未。『嫌じゃなかったら、翔太とデートでもしてやって』だって、そんなのでいいの?」
「ええ~?ほんとに?」
見れば『お礼なんていいのに』、文の後にしっかりとそう書かれていた。『近くには学校の友達もいないし最近は学校とサッカーしかしてないから遊んでやってくれると嬉しい』とあった。
「そっか、この辺からは翔太以外に誰も行ってないもんね」
「じゃあ、OKって入れとくよ?」
幸いなことに、彩未たちの住まいの近くには自転車ですぐ行ける距離にテーマパークがあり、かつては、翔太と京香と3人で行ったこともある。
「彩未の初デート!何着ていく?」
「いや、デートじゃないでしょ」
「男の子と行くんだから、デートでしょ」
何だか京香の方がウキウキとして、洋服を脳内でシュミレーションしている。
「普通でいいと思うのに」
「だーめ。多分翔くんも初デートなんだから、たとえお礼でも最初に嫌な事植え付けちゃうと可哀想でしょ?」
「…なんか、分かったような分からないような…」
こうして、親同士のやり取りの元、彩未は翔太と初デートに出掛ける事になったのだ。
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