Ⅲ-Ⅳ
「やろう、ドヴェルグ」
「な、何をダ?」
「もう一度、人間と魔物の共同社会を作るんだ。表だって衝突を起こしてるわけじゃないんだろ? だったらまだ希望はある。俺の方には役立つ味方もいる。あとは行動するだけだ」
「……しかし、それは世界中の反感を買いかねんゾ? 出来るのか?」
「出来るかどうかじゃない、やるんだ。そもそも、前に一回達成してるんだぞ? あの時みたいに念入りな下準備すれば、出来ない理由はない筈だ」
イオレーの希望にもぶつからない。前回と同じ手段を取るなら尚更で、俺は水面下での行動を余儀なくされる。
一般人のフリをしている英雄の、面目躍如というわけだ。
「……友よ、お前はやはり英雄だナ」
「ああ、世間様がすっかり気に入ってくれてる通り名だよ」
「その世間に潜み、以前のように欺く、というわけだナ……うむ、吾輩も協力するゾ! そうすれば女の子達も認めてくれル!」
「お、おお、頑張れよ?」
失敗しそうな気しかしないけど。
ドヴェルグは立ち上がると、後ろのゴブリン達と共に声を上げている。もちろん彼らは詳細を分かっておらず、王の空回りにも取れる行動だが。
「あ、そうだドヴェルグ、アネモネの霊草、って知らないか?」
「む、それなら知っていル。いくらかため込んでいるのでな、必要なら渡すゾ」
「問題ないなら譲ってくれるか? お金は出すから」
「そんな必要はなイ。友のためとあれば、無償で提供しよウ」
言うが早いか、ドヴェルグは部下達に指示を飛ばす。
それを受けたゴブリン達は直ぐに行動を開始した。競うように家の外へと出て、そのまま向かい側へと走っていく。
ドヴェルグも手伝うつもりなのか、王の証しである杖を突いて立ち上がった。
「では改めて宜しく頼むぞ、友ヨ。吾輩とお前で、世界を驚かせてやろうではないカ!」
「ああ。でも昔と同じで、目立たないようにな?」
「承知しタ!」
そうとう清々しい気持ちになっているらしく、ドヴェルグは笑いながら外へ。
俺は仕方なく待つことにして、少し狭い家の天井を見上げる。
「……やっぱり優しいんだね、ユウ君は」
「これに関して言えば、諦めが悪いってだけかもしれないぞ?」
まあ、最後に笑った者の勝ちだ。
千年の空白で溜まった汚れは、綺麗さっぱり掃除をしてやるとしよう。
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