第14話 うどんでピンチ

 あたりは賑やかな市場やお店が立ち並ぶ港町。

 見た目はどこかの朝市みたいな感じかな。……ちょっとボロめな屋台がずらっと並んでいて、売っているものもさまざまである。

 石の上でジュージューと音を立てて焼く海鮮物のお店とか、魚やイカの干物が売っているお店、貝殻を削って加工したアクセサリー店や、もちろん武器のお店もあった。


 カロウトの酒場のあった通りよりも、ずっと規模が大きくてちょっとわくわくしてしまった。


「さてと、ナーソについたことだし、まずは休憩……いやにょ……」

「おい、女玄宿に行くぐらいだったら、まず先にわたしの武器を見繕ってよ」


 今にもお姉さんのところにすっ飛んでいきそうだったキョウの帯をしっかりと握るわたし。一文無しだし、1人でここに置いて行かれたらどうしようもないわ!


「……そうだったな。まずは武器屋かぁ」


 ぶらぶらと道の真ん中を武器屋に向かい2人で歩いていた。


 ドンッ!


 鈍い音がして、キョウにぶつかる人物がいた。


「あ、すみません」


 とキョウと同じぐらいの背格好の、ちょっと変わった髪の毛の色……黒紫色のボサボサ髪の男がキョウに謝っていた。その相手にいってーな! とかキョウは悪態をついたものの、ぶつかってきた男は急いでいたようで、すぐに去ってしまった。


「ったく、人が多いところはこれだからなぁ……」


 と、キョウはわたしにぶつくさ言ってきた。ど真ん中をのんびり歩いているからそーなるのよ! まったく。そう考えていたときにまたまたグーとお腹がなった。


「あぁ、メシでも食いに行くか。だんごばっかじゃたまらんわ」


 ちょっと試してみたいこともあるし、わたしはキョウに食事の希望を言った。ラーメンに似ているうどんである。なんとこの世界にはうどんがあったのだ。



「ん! んまい! ダシは魚介系と昆布かな。結構あっさりしてて……もぐもぐ」


 いろいろ感想をいいながら食べるどこかのレポーターの真似をしてみたが、口に物が入るとモニョモニョと言ってしまい無理だった。レポーターの方々はどうやって口に物が入っていても喋れるんだろうなぁ。


 でもまあ、そこが本筋ではない。

 わたしが思ったのは、この世界の食べ物を体験したら、それがお札で再現できるのではないか、ということだ。これが出来ればかなり旅が楽になる。

 食いだおれ旅行が可能だよ!


 という壮大な目的のためである。

 キョウと2人で夢中になってうどんを平らげ、そのあと武器屋へと寄ることにしたのだが……。


「ちょ、おい、嘘だろ!」


 キョウが自分の懐に手をやり、何かを確かめている。

 そしてないことを確認し、絶望的な顔でわたしを見て言った。


「金、盗まれた。一文無しだ俺たち」

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