最終話 : 届けたかったもの
どれだけの時が経ったのでしょう?
気がつけば、投げ捨てられたニッキーの服は何着にも増えて、静かにお月様に照らされていました。
「どうして…僕はただ…みんなに、たくさんの服を届けたかった…それだけなのに…」
「ちがうでしょ?」
打ちひしがれたニッキーの背後から女の子の声がしました。
お月様を背にしたその顔はよく見えませんが、ニッキーはすぐにそれが誰なのか分かりました。
「サリー…君の着てる、その服は…」
「ニッキーはいつも言ってたじゃない。『僕はみんなにワクワクを届けたいんだ』って。」
「ニッキーがみんなに届けたかったのは、『服』じゃなくて『ワクワク』でしょ?」
子供のように泣きじゃくるニッキーを、お月様とサリーだけが静かに見つめていました。
・・・・・
お月様が傾くまでニッキーが泣き続けた頃、サリーはニッキーの顔を覗き込みます。
「ねぇニッキー?ニッキーのお手玉、見せ欲しいな?」
「お、お手玉か…上手く出来るかな?実は…もう何ヶ月もやってないんだ…」
「良いの!それでも。だって…」
はにかんだような、少しぎこちない笑顔でサリーは言いました。
「お手玉なら、誰も嫌な気持ちにならないでしょ?」
━ おわり ━
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