第51話 告白
パスタは、素材の味も、味付けも美味しくて、量が多かったけど全部食べれた。
「美味しかったぁ」
素直に言うと、佐倉さんが微笑む。
そこに、デザートと食後の飲み物が運ばれてきた。目の前に、ホットミルクティーとデザートのプレートが置かれる。デザートは、バニラのジェラートと、アールグレイのシフォンケーキ。このお店の手作りだそうで、ほのかな甘味がちょうど良かった。
食べ終わって、佐倉さんと一緒にお店を出る。
「佐倉さん、ごちそうさまでした」
「この後は、どうする?海沿いにドライブしてみるか?」
「はい」
私達は駐車場に戻ると、再び車に乗った。
島の入り口のサービスエリアから、このお店に来るまでの高速は、ほとんど山の中だったけど、今走っている一般道は、海のすぐ側を通っている。開け放った窓からは、心地よい潮風が入ってきていた。
「何があった?」
20分程、車が走った後、不意に佐倉さんに聞かれる。
「何かあったんだろ?」
「……」
一瞬、話すのを躊躇い、私は黙った。
(佐倉さんに、社長のことを相談するのは違うよね)
でも、そうだと分かっていても、誰かに頼りたい気持ちと、佐倉さんと、この数時間一緒に過ごして芽生えた安心感に、私の唇は開いてしまった。
「一昨日の夜、東条社長と会って……言われたんです。お互いに、深く知ろうとしないこと……って」
「……」
佐倉さんは、無言で聞いている。
「私には、あまり関わりたくないって……そう聞こえて……。どうしていいか、私分からな……」
そこまで言いかけた時、佐倉さんの低い声が静かに響いた。
「……フザケんな」
「えっ?」
彼は、乱暴にハンドルを切ると、海に面した小さなパーキングに車を止める。
「あの……佐倉さん?」
押し黙ったままの彼の方を見ると、怒りを滲ませた目をしていた。
「深く知るなって……『割りきって付き合え』って意味じゃないかよ!」
私の中で、モヤモヤしていた疑問を佐倉さんが、はっきりと口にする。
「お前、そうまでして、アイツと付き合いたいか?」
「……」
何を言っていいか分からず、うつ向いていると、不意に彼の腕が伸びてきて、私の肩に乗った。
「もう気づいてると思うけど」
佐倉さんの瞳が真っ直ぐ私を捉える。
「綾瀬。お前のことが好きだ」
そう言って、彼は私を引き寄せた。
「今すぐに、アイツから、お前を奪いたいくらい好きだ」
彼の顔が近づいてきて……鼻先が触れ合うくらいの距離になる。
(佐倉さん……)
鼓動が早鐘を打って、顔が熱を帯びた。
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