第50話 高台のレストラン
休日だからか車が多くて、他県ナンバーもいくつもあった。車から降りると、佐倉さんが言う。
「向こうから、海を一望出来るぞ」
そう言って歩き出した佐倉さんの隣を歩いていくと。
「わぁ~すごい!」
広大な景色に、目を奪われた。今渡ってきた大橋と、大きく広がる海と空。夜景とは違った清々しい風景が、どこまでも続いている。
「仕事とかで疲れた時なんか、ここからの景色見ると、何か悩んでたことがどうでも良くなったりするんだよな」
そう言った佐倉さんの横顔を見つめた。
ふと、彼の横顔に、大学時代の彼氏の顔が重なる。インドアな私をいろんな場所へ連れ出してくれた彼。学生だから、お金をかけたデートは出来なかったけど、楽しかったな。
その後しばらく、そのサービスエリアで、佐倉さんと二人、青く広がる海を見ていた。
「そろそろ、昼だな」
「そうですね」
スマホを見ると、お昼を少し回っている。
「ここからまた高速乗って、ちょっと時間かかるけど、いい店があるんだ。そこで昼食べるか?」
「はい。行ってみたいです」
「じゃあ、車戻ろう」
二人で駐車場に戻り、再び高速に乗って、40分程してから、小高い丘になっている、別荘地のような所の小さなお店の前で、車が止まった。
「わぁ、ここもいい眺めですね!」
車から降りると、先程のサービスエリアよりも、さらに高い場所にあって、光を浴びた海が丘の下の方に広がっている。
「だろ?」
そう言って微笑む佐倉さんと二人、お店の白い扉を開けて入っていった。
お店の中に入ると、イルカやヨット、カモメ、イカリなど海を思わせる小物がたくさん飾られていて、とても可愛い内装になっている。優しそうな白いシャツ姿の女性がオーダーを取りに来た。
「ここのシーフードパスタ旨いぞ」
佐倉さんに勧められて、二人でパスタを注文する。カモメの置物が飾られた窓の向こうの景色を見つめていると、佐倉さんが言葉をかけてきた。
「少しだけ元気出てきたみたいだな」
「……えっ?」
そう言われて、彼の方に視線を向ける。
「今日、家に迎えに行った時、いつもと様子違ったから」
(……気付いてたんだ)
普通に振る舞ってたつもりだったのに、佐倉さんが気付いてたことに驚いた。
「分かるんですね……」
私の言葉に、彼は真っ直ぐ、私を見つめたまま答える。
「分かるよ。お前のこと、ずっと見てるから」
「……」
その言葉に、胸が小さく鳴って、思わず彼から視線を外す。
「お待たせしました」
そこへ、注文していたパスタが運ばれてきた。真っ白な皿に盛り付けられたパスタは、エビやアサリが、たくさん入っていて、トマトソースに絡めてある。
「食べよう。冷めないうちに」
佐倉さんに言われて、私は頷いた。
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