第28話 剥がれた嘘

「ど、どうって、家族と過ごし……」


「ウーソ。本当は、東条社長と、一緒だったんじゃないのぉ?」


「な、何で、分かっ……!」


焦る私に、菜々美が笑った。


「だって、結衣って、ウソついても、すぐ分かるんだもん」


えぇ~、そうなの!?


かなり、ナチュラルに嘘ついたつもりだったんだけど!



「で、昨日は、どこに行ったの?お洒落なレストランとか?」


「……最上階の綺麗なバーに行ってきたよ」


もう隠す意味がないから、正直に答える。


「ふ~ん。結衣、飲めないのに、バーなんて連れて行かれたんだ」


「私は弱いからって、ちゃんと度数低めのカクテルを選んでくれたよ」


「そっかぁ、それは良かったね。でも、気をつけてね」


菜々美が、含みのある言い方をする。


「そのうち、気を許した頃、強いカクテルを飲まされて、気づいたら……なんてことに、ならないようにね~」


「なっ……」


電話で話してるだけなのに、顔が火照った。



「そ、そんなことには、なんないよっ。昨日だって、社長は、個室を予約してたけど、ちゃんと窓際の席に変えてもらったしっ」


「ふーん。個室、ねぇ。結衣のこと、オトす気満々だねぇ」


菜々美の皮肉めいた声が、響く。



……何か、余計なこと言っちゃったような。



「結衣。彼は、これからも、甘い言葉でモーションかけてくるだろうけど、冷静にね?絶対、そういう男は、他でも、女の子口説いてるんだから」


菜々美の言い方に、ちょっと、ムッとした私は、さらに余計なことを言ってしまう。



「菜々美、心配しすぎ!私、今夜は、佐倉さんと飲みに行く予定だからっ」


私の言葉に、一瞬、菜々美の声が途切れた。


「……えっ、佐倉と?」


「そ、そうよ。私だって、別に、社長とばっかり会う訳じゃないからっ」


意地になって、そう言うと、スマホの向こうで、菜々美が、ハハハと笑う。


「安心したよ、結衣」


「……えっ?」


菜々美の言っている意味が分からない。


そんな私に、菜々美の面白そうな声が響く。



「ちゃんと、駆け引き出来てるじゃない!しかも、佐倉と二股なんて、やるね~」


な……っ。


駆け引きとか、二股とか……何か、話が全然違う方向に!



「ちょっと、菜々美、何かすごい誤解してるよ?」


「いいじゃん。どうせ、東条社長とは、ちゃんと付き合うって言われたわけじゃないんでしょ?」


「うっ……」


痛いとこをつかれて、言葉に詰まる。



「だったらさ。結衣だって、自由に、他の男と会えばいいのよ」


「そ、そんな……っ。私が好きなのは、社長だもん。私は、菜々美みたいに、何人もの人とかは……!」


言いかけて、ハッとした。


「……ごめん、菜々美」


「ん?別にいいよ~」


スマホ越しに、菜々美が屈託なく笑う。

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