第12話 皐月・6
そのバイト募集を見かけたのは、二年の夏休みに入るひと月程前だった。
学内サイトの掲示板でえらく話題になっていたのだ。
更には大学側からも、多少でも興味があるならぜひ参加するように、という通達が出されていた。募集している機関は国の息がかかっていて、少しでも多くの人間に参加してほしいらしいのだ。
「そりゃ、破格だよ? このバイト代」
昼休み、学食で彰と皐月と一緒に昼食を取りながら、宏志は言う。食べるのが早い彼の前にあるカツカレーの皿は、殆ど空だ。
「だけどこの額もらえるのって、完遂してからなんだろ? でも無理だよ、こんな条件」
「まあ、難易度高いよね、かなり」
皿うどんを食べながら、皐月は携端をテーブルの端に立てて。
その画面には、バイトの募集要項が映っている。
数時間を拘束される、その一回の参加につき交通費以外に支払われる額は、飲食店やコンビニで同じ時間だけ働いた分の時給に多少いろがついた程度だ。
だが一年を通して参加した者に報酬として別に支払われる額は、大学新卒者の平均年収の三分の一強はあった。
「最初の二ヶ月は五日に一回、次の七ヶ月は週に一回、残り三ヶ月は月に二~三回。臨時で追加参加をお願いする場合あり」
書かれている文を皐月は読み上げて。
「いや、その日程だけならまだアリだけどさ。病気や怪我とか、弔事や慶事みたいなどうしようもない用事で休む場合は証明できるものを提出しろ、て上から目線過ぎない?」
「それだけ休んでほしくない、てことじゃないの?」
口をとがらせて言う宏志に、日替り定食の唐揚げを口に運びながら彰が言った。
「最初の二ヶ月は欠席不可。その後も連続して休んでいいのは二回まで、連続してなくても五回休んだ時点で継続不可。当日連絡無しで来なかったり、三十分以上遅刻した場合はその場で契約終了。よっぽど休んでほしくないんだよ、これ」
「いや、だからソレ無理だろ、って話」
「でもそもそもこれって、研究の被験者になれ、てことなんだろ? だったらさぼられたら全部パーな訳だし」
彰と宏志の会話に、隣の皐月がうなずいた。
「治験に参加して薬飲み忘れられたんじゃ、何の意味もないもんね。これだけお金を払うんだから、参加する側もそれなりに気合い入れろ、てことなんじゃない?」
綺麗に食べ終わってお茶を口に含む皐月に、宏志が頬杖をついた。
「まあねえ。で、二人、やるの?」
そう尋ねられ、二人は顔を見合わせる。
「……やってみてもいいかな、とは思ってるんだけど」
少し歯切れ悪く彰が言うと、隣で皐月もこくんとうなずく。
「インフルエンザとか怪我したりとか、よっぽどのことがなきゃ完走できると思うし」
「これだけ報酬あったら、万一卒業までに学費軽減逃してもしのげるしね」
二人の言葉に、宏志は「確かに」とうなずいた。
「宏志はやらないの?」
「俺無理だよ。だってまだ二十歳じゃない」
彰が言ったのに宏志が即そう言い返して、彰はああ、と画面を覗き込んだ。
「そっか、二十歳以上か、条件」
彰は四月、皐月はその名の通り五月生まれで、もう二十歳になっている。だが冬生まれの宏志はまだ十九歳だった。選挙権や結婚についての「成年」は十八だけれど、飲酒や煙草、それに一部の契約関係についてはまだまだ二十歳が成年扱いだ。
「応募は……来週までか。じゃ無理だなあ、宏志は」
「まあそうじゃなくても無理だよ、俺は。急な店の手伝いなんてしょっちゅうだもん」
「確かにね」
彰はうなずいて、改めてその画面を見た。
冒頭に少し大きなフォントで記されている文章を胸の内で読み上げる。
――『仮想都市開発プロジェクト』は未来への希望です。一人でも多くの方のご参加を!
皐月と二人で赴いた東京での説明会には、驚く程の人がいた。
殆どが二十代で、中に少しだけ三十から四十代の人間が混じっている。応募の条件に細かい健康上の規定があったせいか、それ以上の年代は殆どいない。男女比は多少、男性が多いようだ。
都立の展示場の大きな会議室を使った説明会は、数日に渡り一日三度行われていて、にも関わらず二人の予約した初回のそれは満杯だった。余程の人が応募しているのだろう。
「えー、本日はようこそ、今回のプロジェクトの説明会にお越し頂きありがとうございます」
壇上に立った四十代程の、恰幅の良いスーツの男性が話し出すと、ざわざわしていた会場が一気に静まり返った。
「皆様もご存じの、国家を超えた宇宙開発計画、今回のプロジェクトはその一端を担うものとなります。それではまず、こちらの映像をご覧ください」
彼が壇を降りると会場が暗くなり、正面の大きなスクリーンに映像が映し出される。
『太陽系を飛び出し、新しい地球を発見する。それは人類の大きな夢のひとつです』
ちょっとチープな雰囲気の、宇宙空間をずどんとしたフォルムのロケットが飛んでいく映像と同時に、テレビや映画でよく耳にする、滑舌の良い男性声優の声が語り出した。
『国家の垣根を超えて夢に挑む人々。その困難ははかりしれませんでした』
それからドキュメンタリー的に、今までなされてきた様々な研究が紹介されていく。超長距離を移動する宇宙船とそのエネルギー開発、宇宙での食料や水、排泄物のリサイクルなど資源の研究、移住先の惑星開発の為に必要な植物・生物の改良。
そして、日本がリーダーとなって取り組んでいる、長期低代謝睡眠の際に脳活動の低下を防ぐ為の仮想空間研究。
『ここにいる皆様には、その仮想都市の最初の住民になっていただきます』
画面には闇をバックにして、蛍光色に光るラインのみで描かれた街並の中を、やはり白光の輪郭線のみで描かれたたくさんの人体が歩いていく、という、これまた古臭いイメージが流れている。
『仮想都市には既に、中身の無い人工人格の殻が存在しています。皆様の脳とこの空の器を接続することで、都市の中に新しい仮想人格が出現するのです』
街を歩く線だけの人々が動きを止めると、足元から順にすうっと男女の姿が現れて。一体何だこれは、と言いたげにあたふたと自分の体を眺め回している。
だが人々はすぐに我を取り戻して、にこやかにまわりの人と会話をしながらまた歩き始めた。
『仮想空間の中で活動することで人間の脳に何が起こるのか、一旦形成された仮想人格は空間内でどのような経過をたどるのか、そのような様々な研究を皆様のご協力により行いたいと我々は考えております。ぜひともご参加の程、よろしくお願い申し上げます』
軽やかな音楽と共に映像は終わり、会場の中が明るくなった。
それから壇上に白衣を着た白髪の、六十代後半程の男性が現れ、一礼する。
「この度は説明会へのご参加、ありがとうございます」
まずは参加前に健康診断。これでもし、血圧や心臓などに実験に参加できないような肉体的問題があった場合はそこで参加不可となる。
参加が決まれば、まず最初の数回は脳波のパターンを測定。これは参加者側は特に何をする必要もなく、ただ機械を装着してじっとしていればいいらしい。
それからついに、実際の仮想都市へと入ることとなる。
これもやはり専用の機械を装着して、まず最初は個人個人で、体の動かし方などの基本的なトレーニング。普通に動けるようになったら、参加者同士でグループをつくって、その時々に与えられた課題を解くこととなる。
「実験の性質上、継続してのご参加が何より重要となります」
神崎がそう言って体を振り向けると、会場がほんの少し暗くなって、スクリーンに表が出た。
「この会場に説明を聞きに来られている方々は、おそらく関東圏にお住まいかと思います。関東では、東京と横浜、それから筑波が実験会場となります。最初の二ヶ月分の日程は既に確定しておりまして、朝と夜、二つの時間帯をご選択できます。以後の日取りは各会場にてお伝えしますが、基本的に土日の日中に実施する予定です。まずは最初の二ヶ月分について、ご都合の良い日取りの会場をお選びください」
表の真ん中に『ダウンロードはこちら』と書かれた赤いボタンが点滅して、彰と皐月はそれぞれのリモコンを操作した。
携端を広げてみると、そこに各会場の最初の二ヶ月分の日程が記されている。
スケジュールと照らし合わせてみると、彰は東京が一番、都合が良いようだ。
「基本は全日程のご参加をお願いしております。事前に通達しています通り、最初の二ヶ月に全日参加できなかった場合はそこで終了です。それ以降でどうしても事前に参加できない日がある場合、一ヶ月前までにご連絡ください。実験日の前後一日にのみ変更できますが、こちらで変更が無理な場合は欠席扱いといたします」
印刷してきたバイト募集の内容と照らし合わせながら、彰はその説明を聞いた。
「三十分以上の遅刻は不可、全日程を通してお休みが認められるのは五回まで。なお連続して休めるのは二回までで、それを超えるとその時点で実験を下りていただきます」
「……やっぱり、厳しいね」
隣から小声で囁く皐月に、彰は軽くうなずいてみせた。今の説明内容は事前の募集要項と全く同じだが、ちゃんと読み込んではいないのか、辺りからざわざわと話し出す声が聞こえてくる。
「また、休まれた場合は最終の報酬額から回数に応じて多少割り引かれることもご留意ください。なお実験の内容については、最初に秘密保持契約をしていただきます。もし実験内容を外に漏らされていると判った場合、最終報酬以上のペナルティとなることをあらかじめご了承ください」
続いた言葉に、会場のざわめきがなおも大きくなる。
「この実験に、我々は長い年月を掛けてきています」
その様子に全く頓着せずに、神崎は淡々と続けた。
「今回こうして、一般の方々を仮想都市に招き入れることは、私達の悲願でした。最終的にこれだけの報酬を用意しているのも、我々の決意と覚悟の現れです」
静かながらも強い口調に、ざわめきはだんだんとおさまってくる。
「ですからご参加される皆様にも、それなりの決意と責任をもって臨んでいただきたい。途中で脱落してもいいや、などという安易なお気持ちの方は今ここでお帰りください」
凛とした声で語る神崎にまた会場はざわめいて、最初に挨拶をしたスーツの男性が脇から慌てた様子で手を振った。
「この研究は、未来への大事な投資なのです」
それを完全に無視して、まっすぐに会場を見渡しながら彼は続ける。
「その一歩を我々と共に担う覚悟のある方のみ、この場にお残りください」
壇上に駆け寄ってくる男性を片手で止めて、神崎は深々と頭を下げた。
「一人でも多くの方のご参加を、私達は望んでおります。――ありがとうございました」
結局会場には、三分の一も残らなかった。
急にがらんとなってしまった周囲を、二人は見回して。
「減ったねえ……」
「そりゃまあ、あれだけ厳しく言われちゃうとね」
驚いている彰に、皐月は肩をすくめてみせる。
「でもやるんでしょ、アキくん」
「うん。だってそんな難しい条件かな、これ」
日程表を見ながら、彰は首を傾げる。
「最初の二ヶ月は夏休み中だし、時間も選べるし。ま、病気とか怪我とかしちゃったらアウトだけど、そういうんじゃなきゃ、事前に日取りは判ってる訳だから、そこ絶対空けとけばいいだけでしょ? これやってる間は配達のバイト、最小限にするつもりだし。夜中に急に、『明日の朝一に九州に荷物運んで』なんて依頼より全然楽だよ」
「そりゃアキくんにはねえ。のほほんと生きてる今の日本の学生には厳しいのよ、これ」
可笑しそうに声を上げて笑ってそう言う皐月に、彰はやはり不思議な気がした。
「そうかなあ」
「そうよ。だってこれじゃ、夏休み、長い旅行なんかも全然無理だし。年末年始にも実験日あるんだろうしね」
「ああ、確かにね」
日程表に目をやって、彰はうなずいた。自分のような人間には関係ないけど、確かにこれじゃ、実家に帰省したりするのも難しいだろう。
「皐月、いいの?」
「うん、平気」
皐月はにこっと笑ってぴょこんと彰に向かい直った。
「今まではほら、茶太がいたから、休みは可能な限り帰省してたんだけど、もうね。どうせ実家帰ったって、父さんも母さんも仕事仕事で、毎日手伝いさせられるだけだもん」
「ああ、そっか」
その言葉に彰は、三月に皐月のアパートが火事になった時にやって来た彼女の両親のことを思い出した。
パン職人の壮年の男性、と言われて彰がイメージするのは、まさに本人自身がパン種のごとくふっくらした体型だったが、皐月の父親は本当にこの手でパンがこねられるのか、と心配になる程ひょろっと痩せた男性だった。これは昔、体を壊していたことを皐月があれ程心配する理由も判る。
母親は小柄で、太っても痩せてもいなかったが、どこか重心の低い雰囲気のする、しっかりとした女性だった。
二人はひとしきり皐月のことを心配して質問攻めにした挙句、少し離れてそれを微笑ましく見守っていた彰に突然、くるりと向き直った。
「あなたがあの御堂くんですね! この度は、いえ先日も、本当に娘がお世話になって」
『あの』て一体、どのだろう、と彰がたじろいでいると、つい今しがたの皐月に増して、大量の質問が浴びせられた。年は幾つか、出身はどこか、どこに住んでいるのか、皐月とどんな風に知り合ったのか。
その質問の雨霰の中で、どうやら二人の中では既に皐月と彰は両思いのカップルと確定しているようで、彰は更に慌てた。いや、確かについ先刻あのようなことはしたけれども、でもそれまでは一切、そういう関係ではなかったのだが。
「もう二人とも、やめてってば」
顔を真っ赤にして二人を彰からひきはがす皐月に、母親は頬をふくらませた。
「だってアンタ、御堂くんのこと何にも話してくれないじゃない。おばあちゃんに聞いたっきりなんだから、こっちは」
「だからそれでどうして、そんな話になってるのよ」
「ええ? だって、おつきあいしてるんでしょ?」
母の言葉に皐月はぴたりと動きを止め、更に更に顔を赤くして、途方に暮れたように彰を見た。
その、耳まで赤く染まった姿がやたらに可愛らしくて、彰はくすんと笑ってしまう。
そして二人に向かって、腰から体を折って頭を下げた。
「はい。――遠野さんとおつきあいさせてもらってる、御堂彰です。どうぞよろしく」
真っ赤な頬で立ち尽くした皐月の瞳がぱちぱち、と瞬かれ、薄い涙の膜が張る。
あの時の皐月は今思い出しても本当に可愛かった、彰はふとそれを思い出し、隣できょとんとしている皐月を尻目に、ひとりくすくすと笑った。
最初の数回は、説明にあった通り、ただ横になって脳波を取られただけだった。
病院の入院部屋のように、大きな部屋に幾つもベッドが並んでカーテンで仕切られた中に、機械をつけて数時間横になるだけだ。
「眠ってしまっても構いません」とあちらからは言われていて、その通り、彰も皐月もほぼ毎回、眠ってしまっていた。
眠っている間何か夢を見た気がするのだが、普段割と夢を覚えていられる彰でも、その内容は全く思い出せなかった。ただ何か、極彩色の渦のようなものがぐるぐるとまわっているところしか思い出せない。皐月に至っては全く覚えていないようだった。
その次には別の明るい、もう少し狭い部屋で、ベッドではなくリクライニングチェアに座って脳波を取られた。向こうからは、「好きな本や映画を見たり音楽を聴いたり、学生の方は勉強をなさっても、端末でネットをしてもいいです。ただし、実験のことは部外秘で。参加者同士で会話をなさっても構いません」との説明があった。
実験中はスタッフは部屋の隅の方に一人立っているだけで、他の友人や恋人同士らしい人達はあれこれ話をしていたが、彰達は何となくはばかられて殆ど会話はしなかった。
それが数回続いた後に、頭部から繋がれた機械がごく簡易なものとなって、点滴のように本人が手で持ち運べるようになった。今まで通り好きなことをしたり会話をしたりする以外に、飲み食いしたりトイレに行ったり――それまでは実験中はトイレ不可だった――エレベーターや階段の上り下り、更にはラジオ体操など、施設内をある程度動き回ることを推奨された。同時に熱いものや冷たいものを触らされたり、強い光や風を当てられたり、暖房や冷房がかなり強めに効いた部屋にしばらく置かれたりなど、様々な感覚を刺激される実験が繰り返された。
それは肉体的には大してハードなものではなかったけれど、やはり遅刻や欠席がネックになるのか、開始から一ヶ月半を過ぎた時には最初は三十人程もいた参加者から、十人近くが姿を消した。研究者達は想定内なのか、日に日に減っていく人数にも特に困ったり慌てたりした様子は見せてはいなかったが。
九回目の実験日の後に簡単な健康診断があり、十回目には最初の大部屋に戻された。だが今度はベッドはなく、腰の部分に支えのある、奇妙な板状の器具の上に立たされる。
そして頭部だけでなく腕や足にもあれこれとコードを繋げられ、更には大きなゴーグルとヘッドホンをつけさせられた。
「目を閉じて、しばらくしたら指示が聞こえてきますからそれに従ってください」
そう言われて目を閉じると、少ししてヘッドホンから「目を開けてください」と声が聞こえてきた。
ゆっくり目を開いてみると、そこは何も無い、真っ暗な空間だった。
手足の感覚はあるが、見下ろしてみても自分の体は見えない。
その状態のまま、聞こえてくる指示の通りに腕や足を動かしたり、顔の表情を変えたり手を握ったり閉じたり、軽く声を出してみたりと、様々なことをやらされた。
そしてその次の回では、全くの闇だった前回と違い、説明会の時に見た映像のように自分の輪郭線が白い光となって目に見えた。その状態で、前回同様、様々な動作をさせられる。
ただの輪郭に過ぎないのにそれがあるだけでずいぶん気分が違うものだ、彰はそう思った。真っ暗闇の中でただ体を動かしている時は、果たして本当にそこに「私」というものが在るのかだんだん判らなくなり、ひどく不安になってきて、合間を置いては出される指示の声がたまらなく待ち遠しく感じられたのだ。
だがたった一本の線が引かれただけで、それが確固たる「私」の存在の証のように彰には思われた。
後で聞いてみると、皐月も同じように感じたと言う。暗闇しか無い中では、確かに体を動かしている筈なのに、不意にそれが本当に動いているのかと不安になったり、指示を受けてもどうやって動かせばいいのか突然判らなくなってしまったりした、と。
その輪郭線のみの実験が二度続いた後、三ヶ月目の初日、実験の前に被験者達が小さな会議室に集められた。彰達を含め、残っているのは十八人だけだ。
「本日より実際に、仮想都市に入っていただきます」
白衣の研究者にそう言われて、全員が息を呑む。
「ただし、中に入った際に一緒にいるのは、このグループの人間とは限りません」
その言葉に室内が軽くざわつく。
「全国で行われているこの実験で、同日同時間に都市内にいる他の参加者の方とシャッフルされて、その都度違うメンバーで課題に取り組んでいただくこととなります。あらかじめご了承ください」
彰と皐月は、ちょっと顔を見合わせた。てっきり都市内でも、一緒にすごせると思っていたのに。
「実験中に体調が悪くなったり、何か異常を感じられた際には、片手を上げてその旨声に出してお知らせください。すぐに対応しますので、ご心配なく」
そして手でうながされ、彰達は部屋を出た。
大部屋に入ると、いつものように機械を装着される。
ゴーグルをつける前に、隣の皐月が心配気にこちらを見て。
だいじょうぶ、そう口だけ動かしてみせると、彼女はふわりと、微笑んだ。
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