35-6.真打ち登場?
『チーム【牧野】、エピック二体の撃破により、200ポイント獲得! これによりー……』
ポイントが一斉に並ぶ。
【牧野】――209
【小池屋】――200
【並盛つゆだく】――187
【家族マート】――7
【アトランタス】――24
『チーム【牧野】、僅差により決勝グループ進出決定でーす!』
ぱちぱちぱち、と拍手が起こる。
おれたちは会場に戻ると、待合テントでぐったりとしていた。
……あー、疲れた。
と、そこへ寧々たちも戻ってきた。
「あー、くそ。最後に盗ってやろうと思ってたのによう」
「しょうがないじゃーん。あんなの予想できっこないってばー」
「うるせえ、眠子! そもそも、おまえがサボってなければ勝ってたろ!」
とはいえ、トーナメントは結果がすべてだというのもわかっているはずだ。
小さくため息をつくと、彼女はこちらに向く。
「……さっきは悪かったよ」
一転して素直な謝罪に、おれは苦笑した。
たぶん、キルスティールのことだろう。
「……わかってるよ。おまえらはああしないと勝てないからな」
姫乃さんが不思議そうに聞いてくる。
「どうして?」
「寧々たちのチームって、三人ともカウンター型ですよね? 『ハント』ではいかに素早く仕掛けるかが大事なんで、実はいちばん不利なチーム編成なんです」
待ちだけでは、どうしても遅れる。
それを打開するためのキルスティール作戦だったんだろう。
その上であそこまで追い込んでくるんだから、本当に大したもんだよ。
「つっても、まだ敗者復活戦があるからな。見てろよ、決勝はわたしたちがもらうからな!」
「えー。まだすんのー?」
「眠子、ちゃんとアパートに泊めてやってるぶんは働け!」
「でもさあー。あれって、ほとんど寧々ちんの愚痴の付き合い……」
「わあーっ! 馬鹿、変なこと言うんじゃねえよ!」
なんか白熱してんなあ。
と、白熱と言えば……。
「そういえばDグループの試合、そろそろですね」
確か、佐藤さんの【どさんこ+】と……。
「ハァーッハッハッハ! よくぞあそこから挽回したものだ! 素直に褒めてやろう、牧野センパイ!」
でたよ。
「……おまえ、少しは静かに登場できないの?」
テントの外に、いつの間にか利根が立っていた。
「なんだ、おれの登場が迷惑だとでも言うのか!?」
いや、そうは言わないけどさ。
おれたち疲れてるから、そこのところは空気を読んでほしいっていうか……。
と、寧々が鬱陶しそうに睨んだ。
「うるせえぞ、くそガキ」
「ハッ! あんな手を使っておきながら、無様に負けた寧々センパイではないか」
「チッ。口だけはいっちょ前だなあ」
いやあ、こいつらも仲が悪いよなあ。
と、そのときだった。
「へい! リーダー、邪魔!」
「へいへい! マジ使えねえ、そっち行ってて!」
横から二つの人影が飛び出してくる。
げしっと利根が蹴飛ばされた。
「んぐあ!?」
利根を蹴飛ばした二人、双子らしき女の子たちがこちらに向かってきた。
たぶん眠子よりさらに下……、っていうか、まだ中学生っぽいけど。
「わたし、ハンターの牡丹です!」
「同じく紫苑です!」
「あの牧野さんですか!?」
「本人ですか!?」
な、なんだ、この二人……。
ひとりは髪の一部を赤く染めていて、もうひとりは青く染めている。
とてもアバンギャルドな印象だ。
いまの若い子ってすげえなあ、学校で怒られないのかな。
「は、はあ。牧野ですけど……」
きらりん。
「サインください!」
「格好いいのください!」
どっかから取り出した色紙をぐいぐい押しつけてくる。
「え、どうして?」
「ずっとファンでした!」
「あの伝説のランク戦、300回観ました!」
あ、そ、そう?
いやあ、可愛い子たちだなあ。
「うわー。マキ兄、鼻の下伸びてるー」
「まだ子どもだぞ……」
「……ハア」
ぞくっとしちゃうね!
いや、普通こうなっちゃうでしょ?
「待てえい! キサマらはおれのチームだろうが! 敵に塩を送るんじゃない!」
と、利根が復活した。
へえ、こいつのチームメイトなのか。
「…………」
「…………」
すると、その双子が急に静かになった。
ぼそっとつぶやく。
「……うっせーくそが」
「……マジでリーダー面うぜえ」
「……あの牧野さんのパーティメンバーっていうから組んでやってんのに」
「……ほんと、自分の立場わかってんのかなあ」
「うおい! 泣くぞキサマらあ!」
ひゅー。
さっきのギャップでおれも泣きそう。
と、アナウンスが聞こえた。
『予選Dグループを開始します。お集まりください』
利根がそちらを見る。
「とにかく、おれの力を思い知らせてやるぞ! 首を洗って待っているがいい!」
フハハハハ、と高笑いを残して去っていった。
姫乃さんがそのうしろ姿を眺めながらしみじみ言う。
「……面白いひとねえ」
「まあ、外で見てるだけでいいなら」
お手並み拝見だな。
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