17-2.おれたちの宴会は終わらない!


「主任、そこですよ!」


「ていやあ!」


 主任が大剣を振りかぶる。


 ――ガキンッ!


 まっすぐに振り下ろした刀身は、ビッグ・クラブの鋏に受け止められる。

 力を込めるが、それ以上は剣が進まない。


「ま、牧野!」


「とりゃ!」


 クラブの脚の関節を狙って刃を差し込む。

 それはすぐに切断され、鋏を支える腕が傾いた。


 同時に主任の腕にブーストをかけ、その力を増加する。


「とりゃああああああああああああああ」


 大剣が鋏を押し返し、甲羅にヒビを入れた。

 そのまま、本体を一刀両断にする。


「や、やったわ。……あれ、牧野?」


 おれはクラブを拾うと、向こうのバーベキュー部隊に持って行った。


「すみませーん。これ焼く場所ありますかー?」


「あ、いいですよー。二十分ぐらいしたら取りに来てくださーい」


 戻ると、主任がなぜかじと目でおれを睨んでいる。


「……ねえ!」


「なんですか?」


「なに食べようとしてるのよ!」


「うまいですよ? 主任だって、前にダンジョンでわいわいご飯食べたいって言ってたじゃないですか」


「そうだけど! そういう意味じゃなくて!」


 主任は向こうでモンスターを狩っている『薩摩連隊区』のメンバーを指さした。

 中にはビール片手に、魚型のモンスターを刺身にしているひともいた。


「ちょっと緊張感なさすぎでしょ!」


「いきなり、どうしたんですか?」


「わたし、昨日ホテルで調べたわ。レイド戦っていったら、みんなで夜遅くまで作戦を練ったり、違うパーティ同士が連携してモンスターを倒したり……。とにかく、みんなで一丸となってモンスターを倒すのが楽しいんでしょ!」


「いや、だってなあ……」


 このクエスト自体、もう10年近くやってるものだしな。

 しかも毎年、同じことの繰り返し。

 いまさら緊張感がどうとか言われても……。


「それにモンスターの数も少なくなりましたからねえ。今日はそろそろ上がりだと思いますよ」


「で、でもでも……」


「うーん。おい眠子。おまえも……」


「すーすー」


 ……こいつ、いつの間にかハンモックで寝てる。


 主任はがっくりとうなだれる。


「わたし、ちょっと魔法スキルの練習してくるわ」


「あ、それはダメです」


「なんでよ!」


「いや、海の中にいるとザビエルの洗脳スキルにあてられる可能性がありますからね。一応、陸の上にいてください」


「……わかったわ」


 ハアとため息をついたとき、再びアナウンスが入った。


『ザビエルが海中へと戻りました。本日のクエストは終了です。みなさま、お疲れさまでした』


 モンスターたちも、ざわざわと海の中へ戻っていく。

 おれたちはホッと一息ついた。


 と、そこへ西郷さんがやってきた。


「じゃあ、牧野どん!」


「そうですね」


 向こうでは『薩摩連隊区』によって宴会の席が出来上がりつつあった。

 モンスター食材も、たんまりと積んである。


『打ち上げだあ――――!』


 主任が、恨めしそうにつぶやいた。


「さっきまで、さんざん飲んでたじゃないの……」

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