第3話 その仲間たち

「遅かったじゃないか、マサヨシ。君が寝坊なんて珍しいな」

 宿屋の食堂に入ると、既に席に座っていた騎士リリアが声をかけてくる。

 長い金髪を後頭部で結って、後ろに流している。いわゆるポニーテールというやつだろう。整った顔立ちと強い意思を秘めた青い瞳は、可愛らしさよりも凛々しさを感じさせ、いかにも騎士然とした雰囲気だ。

 普段は重い鎧を着ているが、宿屋ではインナーに上着を羽織った格好をしており、上着から覗く彼女のスレンダーなボディラインは、なかなかに見応えがある。

「昨日、遅くまで本を読んでいたんだ。魔王に関する文献をちょっとね」

 この言い訳は真実だ。勇者マサヨシはくそマジメたったみたいで、昨夜、本当にそれを読んでいた。

 いつもならそれでも寝坊なんてしなかったんだが……まあ俺は寝たい時に眠る自由人だからな、仕方がない。

「そうだったのか。勇者としての自覚がしっかりと芽生えてきているようだな」

 リリアはうんうんと頷きながら感心している。ちょっと上から目線な感じだが、まあいかにも女騎士って感じで、これはこれでアリだな。

「あら、マサヨシ様は歴とした勇者ですわよ?」

 その言葉と一緒に、背後から手が伸びてきて、俺は何者かに抱きしめられる。

「わ、わわ」

 柔らかな感触が俺の後頭部に押し付けられる。やばい。この感触は、色々とやばい。

「ふふ、こんなに小さくて可愛らしいけれど、神に選ばれし勇者なんですものね」

 その声と柔らかな感触だけで、背後にいるのが誰なのかわかる。

 彼女は魔術師のイーリス。腰まで伸ばした燃えるような赤髪と、その暴力的な肉体が印象的な美女だ。

 とろんとした目つきをしながら、少し間延びしたような口調で喋るので、いつも独特な雰囲気を醸し出している。

「ちょっと、イーリス! マサヨシが固まってるから、離してあげなよ」

 先ほど俺を起こしてくれた銀髪の美少女リトが、拘束されていて俺を引き離してくれた。

 リトは僧侶だ。神への信仰心を力に変えて奇跡を起こし、人を癒したり魔を退けたりする事ができる。

「ありがとう、リト。イーリスのスキンシップには、まだ慣れないな」

 そう言って俺は苦笑する。自慢じゃないが俺は前世で死ぬまで純潔を守り通した男だ。いきなり背後からナイスバディな美女に抱きしめられて、上手く立ち回れるわけがない。 

 ちなみにリトは、俺の腕を抱えるようにして助けてくれたので、現在、彼女の慎ましやかな胸が俺の腕に当たって……。

(いない、だと?)

 その事実に驚きつつも、俺は言いようのない多幸感を覚えていた。

 すぐ近くに美しい女たちがいて、ちょっと良い匂いがしてくる現状は、とても良い感じだ。

 騎士リリア、魔術師イーリス、僧侶リト。

 それぞれに個性豊かな彼女たちが俺のパーティメンバーであり、将来の嫁なのだと思うと、胸が高鳴ってくる。

(異世界転生、最高だ!)

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