第2話 勇者マサヨシ誕生

「マサヨシ! 朝だよ!」

「うぉわ!?」


 大声で名前を呼ばれて、慌てて飛び起きる。

 可愛い女の子が、俺の前に立っていた。

「もう、相変わらずお寝坊さんだね。二人とも食堂で待ってるよ」

 首の辺りまで伸びた銀色の髪に、大きな青い瞳。

 まだ幼さが残る顔で仕方ないなぁと笑うの可愛すぎる。とんでもない破壊力だ。

 だが、俺は彼女の事なんてまったく知らない。

「君は、誰?」

 俺がそう言うと彼女は一瞬固まった。だが、すぐにははぁんと言わんばかりの笑みを浮かべる。

「マサヨシ。まだ寝ぼけてるんだね。僕は先に行ってるから、顔でも洗って早く下りてきなよ」

 そう言って彼女は足早に部屋から去っていった。

 1人で取り残された俺は、ひとまず立ち上がって洗面所へ向かう。

 洗面所は風呂の脱衣所にもなっていて、そこには大きな姿見があった。

 そこで改めて自分の姿を確認する。

 男子として程よい長さの金髪に、先ほどの彼女と同じの大きな青い瞳。

 顔立ちはまだ幼いが十分に整っており、白い肌と長い金色のまつげはまるで天使のような愛らしさだ。

 ぶっちゃけ、さっきの美少女とも十分に張り合えるほどの超絶美少年だ。

 それが俺——マサヨシに与えられた新たな体だった。



 勇者マサヨシ。

 物心がつく前に孤児院に預けられ、そこで育った。

 ミッドガルドでは14歳で成人として認められるため、その歳になってすぐに故郷の村を出て、冒険者となる。

 だが、冒険者になってすぐに、いきなり王城へと呼び出され、そこで一振りの剣を持たされる。

 剣を手に取った瞬間、それを見ていた王様が嬉しそうに言った。

「その導きの剣は勇者にしか持つ事ができない。やはりお主が勇者で間違いない」

 なにやら巫女様とやらのお告げで「金髪碧眼の冒険者に成りたての少年が勇者である」とか言う話になっていたらしい。

「冒険者マサヨシ、いや、勇者マサヨシよ。お主には悪しき魔王を打倒してもらいたい。そのためならば惜しみない援助を送ろう」

 そこからはあれよあれよと言う間に事が進んだ。

 駆け出しの冒険者では手が届かないような高級装備を手に入れた。

 魔王打倒のための仲間として、凄腕の騎士、魔法使い、僧侶が派遣された。

 しかもその全員が超美少女なのである。さらにさらに。

「勇者の使命は魔王の打倒だ。だが、その優秀な種を後世に残すことも重要だ」

 という事らしいので、色々とやりたい放題していいというお墨付きまで頂いている。

 そんな状況となっているモテモテ勇者のマサヨシくんが、今の俺ってわけだ。


 落ち着いて自分の記憶を辿っていくと、それらの事実が思い出された。

 言うなれば異世界の勇者マサヨシ14歳の中で、俺という自我が覚醒したといった感じだろうか。

 正直に言うと、せっかくの転生なら、赤ちゃんからやり直したかった。

 だが、記憶によると14歳までは孤児院暮らしでハードな人生を送っていたみたいだから、良かったのかもしれん。

 と言うか、まじで女神様に感謝だわ。もっと願いを言いたかったけど、これだけ反則クラスの待遇を用意してもらってるんなら、文句はない。

 天使級に可愛いショタ勇者になって、美少女たちとハーレムライフを送れるなんて、いくら金を積んでも体験できないプレイだろう。

(異世界転生ってサイコーだわぁ)

 鏡の向こうの顔がだらしない笑みに変わる。天使のような顔だから、そんな表情さえも可愛らしい。

「よし、じゃあ愛する我がワイフ達のところへ行きますかね」 


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