だいにわ
今から、社会のテストがはじまる。
社会はまぁ普通に得意だし、なんとかなると思う。
中学校生活何度目かのテスト。そんなに、緊張することもない。
「はじめー」
用紙2枚に名前を書いて、解き始める。
落ち着いてゆっくり解こう。この前も社会はけっこう時間が余ったし、見直しが3回くらいできた。でもまぁ、満点は取れなかったんだけど。
焦って間違えるくらいなら、じっくり解いて2回見直しにしよう。それが昨日、私が立てた社会のテスト対策だった。
10分くらいだったか。社会の先生、化粧が濃いおばちゃんがドアを遠慮なく開けてやってきた。
質問あるかって聞いて、誰も手を上げない。ってか来るの早すぎなんだよどんだけ自信があるんだよ…。
この先生は自己紹介でも言っていたけれど、テスト作成でミスをしたことがないらしい。すごく几帳面で雰囲気にも壁があって、近寄りがたい先生だ。だからもう5月なのに、名前も覚えられない。さ…ナントカ先生。
先生の顔をちらみする。得意げな顔だ。
越前先生にも、ちょっとどやった顔でご機嫌よぅ的に挨拶をしてどっかいった。やっぱちょっと苦手だなって……え?
隣の人、なんか、おかしくない? なんでそんな慌ててるの、テスト解かないの?
えだって、
………まさか、シャーペン、ないの? え? うっそ、そんなの漫画の世界だけじゃないの……
ちょっと、同情した。
まだ諦めてる感じじゃなさそうだし、まぁ私も菱田くんとちょっと仲良くなりたいと思ってたところだし。
なら。
シャーペンくらい、貸してあげてもいいじゃないか。
私の机には、あと2つシャーペンが乗っていた。全部水色系で統一されている。消しゴムは2個。片方落としても大丈夫なように。
こんな風に、私の文房具が役に立つとは思わなかった。
でも、人助けに悪い気はしない。
シャーペンと消しゴムくらい、いいよ。
「ん」
私は手に、B芯が入ったシャーペンと、菱田くんも使ってる消しゴムを乗せて、彼に差し出した。
そりゃ、まぁ、
でも、きみに選択肢はないよ。
だから、はやく受け取って。
「ありがとう」
メガネの彼は、小さな声で礼を言った。
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