2.MAD HEAD LOVE

「あれ、うっちゃんじゃん。元気? なんか死んだって聞いたけど」

「うーん、元気ちゃ元気? とりあえず死んだのは本当だよ」

「大変だねえ」

 紹介が遅れまして。この子はネコマタちゃん。わたしの友達で宇宙人。

 宇宙人だけどネコマタです。ネコじゃないよ。よろしくね。

 あっ、こっちのチャンネル入ってきたらだめだって。混乱するから。

 ごめんごめん。

 こんな感じで、この子には、きみがわかるんだ。

「で、誰なの?」

「読者、かな」

「読んでるのかあ」なんか、照れるね。ところで「死んだって?」

「そ。殺されちゃった」 

「へえ、やっぱ大変だねえ。復讐とかは? 手伝う?」

「いや、その辺は大丈夫。概ね話はついてるし。そっちは? 最近どう?」

「ぼちぼちでんなあ」

 こうやってふざけたように笑うのを見てると、かわいいなあ、って思う。木曜もけっこうかわいいけど、ネコマタちゃんにはかなわない。ほんと、身内、いや、友達のこと身内って言っていいのかわからないけど、言うよね? を褒めるのってなんかちょっと照れるっていうか、褒めるがわが照れてどうするんだって話だけども。

「照れますなあ」

 照れあってもしょうがないんだけど。……なーんか、やりづらいなあ。とにかく、ネコマタちゃんはわたしの友達で、ううん、親友、だな。一番。

「なに、あらたまって」

「紹介してるんだって」

「あ、そうか」

 やりづらいなあ……。で、木曜はネコマタちゃんのことが嫌い。

「えっそうなの」

「うん」

「ショックー」

 でもまあそうだろうね、といった風におどけてみせる。とても宇宙人とは思えないくらいかわいい。宇宙人とは思えないくらい? あれ、たとえば、宇宙人てどういう風、だと思う? リトルグレイみたいな、いかにも人間とは姿が違います、みたいな? UMAって言うんだっけ、ああいうの、なのかな。

「その辺はいろいろだよ」日本にもいたじゃんバンド。宇宙人てやつ。あ、解散したの? けっこう前? そっか。

「ところでさ」なんの用?

「あっ、そうそう。ネコちゃん、彼氏さんは元気?」

「相変わらずだけど。呼ぼっか?」

 ネコマタちゃんは彼氏も宇宙人。いまも宇宙に居る。なんて、地球だって宇宙じゃん、って言われたらそれまでだけど、ね、地球の外に居る、ってこと。

「うん、お願い」

 スマートフォンを操作する。たぶんLINE。別になんか陣とか呪文とか光ったりとか必要ない。意外? でも宇宙人だってね、さっきの話でいうと同じ宇宙に住んでるわけだしね、技術も見た目も進化とか、寄せてきたりとかするんだよ。たぶん。

「いま火星だから十五分くらい待って、って」

 うーん技術革新。或いは未知のテクノロジー。ていうか。

「呼び出させておいてなんだけど、彼、ヒマなの?」

「大丈夫。いま昼休み中だから」

「じゃ、ご飯ぐらい出そうか」

「いいの? じゃ、お言葉に甘えよっかな」

「ネコちゃんは自分で払ってよう」

 どうしてそこまでして呼ぶ、呼ばせるのか気になる? まあ、それは彼が来たらわかる、と思うよ。

 と、来た。ほら、タコの見た目した人? がこっち向いて来てるでしょ。

「よっ」

「お久しぶりです……そちらの方は?」

 かくかくしかじか、って一度は言ってみたくない? そんなこともない? とにかくこの人、差異藤さんていうんだけど、にこれまでの経緯ときみについてを説明しておく。

「と、いうわけなの」

「それは」大変でしたね。

 差異藤さんはちょっとかしこまったというか、丁寧すぎるところがあって、本人曰く外星人だから、らしいんだけどネコちゃんはああだしなあ。

「ああ、って何さあ」

「とにかく。木曜さんと確太さん、ですか。復讐などは、しなくていいんですか?」

「そうそう」

「まあ、その辺は。昼食べながらにしよう」

 宇宙人と、宇宙人と、幽霊と、きみ。そっちもお昼? それとももう食べちゃったかな? ま、好きに注文するなり食べるなり飲むなり、するといいよ。

 ここはハロウィン軒っていう、色んなひと、ひと? なんかいろいろ集まってくる店。宇宙人、差異藤さん言うところの外星人? 幽霊、悪魔、天使、魑魅魍魎、人……。

「復讐、ねえ」

 この前もきみに言ったとおり、わたしはそんなこと考えていない。というか、わたしの基本理念は『面白いかどうか』であるからして、その方が面白かったらやるかもしれないけど……ううん、どうだろう、あまり気分のいいものでもないだろうし。

 どう、きみは見てみたい?

 まあね、わたしも情とかね、ないわけじゃないからね、ありすぎても情念つってそういうことになるんだろうけど。

「どっちかっていうと、応援したいの。ふたりの今後を。それで」ネコちゃん達に相談したい、みたいな。

「わたしはあまり、気が進まないのですが……本当に復讐しなくて、良いのですか?」

「うん、それはもういいっていうか、ぶっちゃけ、いまのこのカラダ……ってまあ、ないんだけど、こういう立場、立ち位置になったのけっこう気に入ってるんだよね」

「ちょっとわかる」死んでなければ羨ましかったかも。

「たださ、応援はしたいけど干渉できない、ってのがやっぱもどかしくてさ」

「確かに。要するに、話しかけることしかできないってことでしょ?」無視されたら終わりじゃん。

「そうそう、そういうこと」

「でも、幽霊になるというのはそういうことなのでは」

 確かに、差異藤さんが言うことももっともだ。

「直接手を下しちゃうと悪霊に認定されちゃうし、ねえ」

 そう。きみにまだ言ってなかったね。幽霊も監視っていうの? やること、やったことについて評価が下るようなのがあって。まあ死んでも生きてる、いや死んでるな。とにかくこうやって活動してるからにはハンデとかペナルティとかあっても仕方ないとは思うんだけどね。

 その通りです。

 え、誰?

 お食事中失礼します。目下閏さん、ですね。

 はい。

 監査のクローゼットと申します。早速ですが、話があるので、こちらへ。

 え、あっ、はい。

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