宇宙空間地球☆滅びと支配

ハヤトが二人を見つけた。

美しい?どこが美しいんだろ?

赤茶けた大地にポツンポツンと緑があり後は黒い海が広がるだけだ。

あのタカビーな男がこんな星のどこが気に入ったのかよくわからねえな。

ハヤトは銀色に光る円盤に写し出された地球を見て思った。

ふーん楽しそうだね……まあでもそれも終わりだな。

ヒカルと腕に抱かれた赤ン坊と茶色い髪の女性が写し出された円盤に剣をつきたてる。



空から銀色の艦隊が降りてくる。

一番見たくない男があらわれ妻と子を見えない糸で縛りつけた。

「かえせ!ヤエはお前のものじゃない!」

ヒカルがいきなり叫んだので道具の手入れをしていたエイジは驚いて指を切ってしまった。

「キャー大変。薬草、布!」

貝のからむきしていた奈帆がおどろいてとびあがった。

「落ちつきなさいって奈帆。返せて私がトシさんに頼んで船を見せにもらったのよ。」

薬草を練った固まりと布を持ったヤエがおこる。

「ごめん変な夢をみた。」

ヒカルがあやまる。

「疲れてるのよヒカルさん。遠出が多かったから。」

奈帆がエイジの傷の手当てをしながら言う。

最近、動物達が奥地に移動してしまった。

森が深く狩がしずらいので何日も獲物を探し求めなくてはならない。

狩にでる男達は何日も野営する日々が続いていた。

島の部落から離れたとこに住む巫女は大気が濁っているかだというが「ムー」からきた科学者がチェックをしにきた時は生き物の害になるものはなかった。



いつも通り、トシ、ヒロとともに漁にでたエイジは割れるような頭痛に襲われた。

「どうした?」

アミビキの途中で頭を押さえたエイジをトシが心配そうにのぞきこむ。

「ごめん、頭が痛い。」

割れるように痛い。

「私が手伝うからエイジさんは休んでて。」

ちょうど側を泳いでいた奈帆が船にとびのる。

「助かるありがとう。」

奈帆にお礼をいったあと意識が遠退いた。

「ヒロ、先にかえるね。エイジさんが具合い悪いみたい。」

奈帆が叫ぶ声が遠くに聴こえる。


透明な円柱の中で眠る生き物達……環境が後はととのえばだいじょうぶ。

『タカユキ!』

女性が飛び込んできた。

『酷いのよあの子達は教育なんて受けてないあいつらの……実験材料にされたのよ。』

女性は泣いていた。

『すぐに話はつけに行くから落ちつけ。』

場面は変わる。

『やはり鳥のようには飛べないね。』

腕に翼をつけられた少女がグッタリとよこたわっている。

『お前たちは何をしたいんだ?』

『完璧な芸術作品を作りたいのさ。僕の実験が成功すれば本物の天使が作れるのさ。』

男は笑った、もう一人の男も笑った。

『お前こそ何がしたい?あんなコレクションこれからの時代にはあわない。』

円柱に入れられた人間、切断される悲鳴…………

「ウワー辞めてくれ。」

エイジが目をひらくとそこは天井に色々な記号がかかれた知恵者の家の天井だった。

「気づいたかい?」

火が弾ける囲炉裏にヒカルと老婆が座っていた。

「フウカさん、ありがとうございます。」

フウカは知恵者でもあり部落の医者でもある。

「あんたも呪縛がかかっているよ。押さえることは出来てもはらえなかったからまた何かおこるかもしれないね。」

呪?黒いベールに赤い唇がうかぶ。

「恐らくあの黒魔術師にみつけられた。」

薬湯の入ったワンに目をおとしたままヒカルがつぶやいた。

「黒魔術?」

「ああ、俺達はこの惑星の人間じゃない。ウニバルゾと言う異界で造られた人間だ。俺はエイジより早く造られたから記憶にある。」

ヒカルの頭のなかでブロンドに紫の瞳の男と黒髪の女性がよこぎる。

「黒魔術か、昔はこの地球にもあったと言われているがワシにはわからない。恐らくワシらと力の原理は一緒じゃろう。二人ともトモエ様のとこにしばらくはいたほうがよい。トモエ様のほうが目に見えぬ力を見る力があるから安全だろう。村の者にはそなた達はユーリのとこで治療していると言うておく。よいか悪い力に騙されてはならんぞ。」

ヒカルは何かを思い出しそうだった

どこか、美しい花が咲く庭園にヒカルはいた。小さな背中に羽がはえたフェアリー達が楽しげに花の中で遊んでいる。

その美しい世界に突然黒い蔦が雨のように降り注いだ。フェアリー達が体を丸め死んで行った。

ヒカルは逃げようとしたが完全に蔦に捕らわれた。

そして暗い闇の中に放りだされなにもわからなくなった。

「ヒカル、だいじょうぶか?」

エイジの声で我に返るといつも身に着けている胸もとの水晶でできた小刀を握りしめ血が流れていた。

「嫌な夢でも見たのかい?」

「美しい花が咲く庭園に黒い蔦が降ってきて闇に捕らわれる夢を見ました。あれは植物じゃない。あの悪魔が使うムチと同じだ。」

フウカがヒカルの手の傷に薬草を巻き付ける。

「その蔦を操る者があんたたちに術をかけているんじゃろう。ワシには知識が足りぬが出きる限りのことはしよう。」


トモエの住む巨大な木の根元にある洞窟は、日があまりささない。

頭の痛みが激しくなり二人とも寝込むことが多くなった。

フウカから事情をきいたトシとスバルだけはたまに訪れた。

その日は冷え込み激しく雨が降っていた。

雨を避けるため二人は奥にある祭壇のそばで壁にもたれていた。

「けがわらしい、そなたらは忘れたのか?わらわたちとともに笑いあった日々を、生命の美しさをさかなに酒をくみかわした日々を……。」

祭壇の前で剣を上にむけかたまっていたトモエが叫ぶ。

巫女であるトモエは目に見えないものと語る、もうなれたがあまりに怒りのこもった声なので二人は思わず立ちあがりまわりを見渡した。

ともえが炊いた祭壇の前の火が揺れるだけでなにもない。

「なぜ?その者の闇に手をかす?わらわが知る者達は自然とともに生きているそのように生きている者達にも罪はあるのか?」

炎が激しくなり消えた。

壁にあるろうそくの明りだけになった。

息を切らせうずくまっていたトモエがゆっくり起き上がる。

「闇の使いてが来る。そなたたちはここにいてはならぬ体調が戻ったらムーに渡るのじゃ。」

トモエの言葉にヒカルはうなずく。

「この事実をわかっていればヤエと一緒にはならなかった。つらいがここをでたほうがいいな。」

炎がヒカルの整った横顔をてらした。

「ヒカル、事実てなんだ?」

「我々はウニバルゾの『ゴッド』の操り人形なんだ。シオンという独裁者に作られた。」

はきだすようにヒカルは言って立ちあがり入り口に歩いて行った。

頭の中で何かがささやく、ここにいるなと……。

エイジの脳裏にまたコンピュータに囲まれた部屋が浮かぶ。

カプセルの部屋がうかんだ、そこはめちゃくちゃになっていた。割れて中の生き物は血だらけで床にうずくまっていた。

最近たて続けで見る夢だ。

記憶なのだろうか?

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