悪魔の序曲

暗い洞くつには無数の傷痕

真ん中におかれた円形の台の上には湯気のたつ壺

そこからは絶えずボーと光る青い影が立ち上る。

「役立たずが、もうよいお前はいらない。」

アーリアは目の前でひざまずく男を蹴飛ばした。

男はうめき声をあげる。

「ハヤトすぐに行方を追いなさい。」

黒い覆面をした男性が一礼して部屋の暗がりに消える。


扉を開く時にテレポート側の力の弱さが原因だろうか?

空間移動を失敗したことはない、印をつけた者をおけば何処へでも行けた。

壺の前にたつ、ハヤトは人探しにたけているどんなに気配をごまかしても彼の刃は逃れられない。

裏の仕事を復讐をとげてきた……。

「アーリアちゃんそんなにカリカリしなくていいよ。異世界だから予想外の事がおきるのは想定内だからね。」

シオンが炎が勢よく燃えている台を見ながら言う。

「申し訳ございません。すぐに行方を探します。」

シオンの手がアーリアのベールを剥ぎ取る。

「焦らなくていい。それよりも言うこときかない汚れた者達の処理のほうが優勢さ。ディスくんも役にたたなかったわけじゃないさ。僕の新しい器をおみやげに持ってきてくれたからね。イライラをおさめてさあ美しい僕と溶けあおう。」

形の整った口がアーリアの小さなサクランボのような口に重なった。


シオンは自分に酔っているナルシストだ。

アーリアは知っていた男を酔わせれば甘い蜜が吸える

そして操れる

シオンはそこまで気づいていない。

シオンの美しさにほれたのでわない

見てみたかっただけだ精神を技術で操る人間の精神的な姿、その体を…… 言いなりになる振りをたまにする

快楽に溺れることはない

すべて磨きあげた美

シオンは気に入っているようだ

アーリアの持つ闇はこのウニバルゾで生まれた者とは異なる

今、滅びる寸前の異界で生まれた力

異界の神と呼ばれる者達の怒り、人々の憎しみからわき出た力

それかまアーリアは力の源だ。

シオンの力などはねとばせるがアーリアの本来の復讐をしたい場所とシオンの支配したい場所が一緒なので協力しているのだ。


地球人とくに自分を闇の淵へ追いやった国の人間が憎い……精神の奥深くで何者かがささやく。

恵を与え、守てきたのに破壊し慈しむことを忘れた人間が憎い。

イッソハカイシテシマエ

「それでは面白くない、痛みつけてもがく姿をみてからだよ。」

アーリアは先ほどシオンが持ってきた贈り物をつかみ壺の上でつぶしながらつぶやく。

「エコエコアザラーク……。」

煙が濃くなり壷がカタカタと音をたてた。

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