▫第三層『コア』
この銀色の人工物だらけのシティにも精霊達はいるようだ。
こうして水とつかの間に抜ける風を感じるとリアには精霊の声がきこえた。
ここは地下、本当は地上だった場所、上に人工の建物とパネルを敷き詰めていったのでここもまた地下になってしまったのだ。
地下一層と呼ばれる地域までは裕福でこのシティの上の人々の支援を受けている者が住まうが、二層からは貧しいものばかりが住まう。
ただこの二層が恵まれているのはまだ光があたる場所があり多くはないが大地から芽吹く物の恵みがあると言うことだ。
リアが立つ水に浸された広場にも木々がその細い幹を寄り添わせながら生きていた。
「もうだめね、ここの水もそのままでは飲めないわ。」
こないだまで白い花が咲いていた水面は今は黒くなっている。
この花は「パールフラワー」と呼ばれていて綺麗な水の中でしか咲かない。
リア達はこの花で飲める水を探し出していた。
もうあまり飲める水はない、上の貯水池に手を出せば殺されるだろう。
水がダメになると穀物も育たない、リアはタメ息ついた。
「『水の精霊』さん恵をください。私たちは生きれない。」
精霊達はいずれはここを見捨てるだろう。
『いいかいリア、よく覚えておくんだよ、私たちは精霊と聖獸達に守られているから生きていけるんだよ。』
母の言葉だその母は『ゴッド』に連れ去られた。
おそらく生きていないだろう。
大地の恵がなくなれば、人は生きて行けないと幼い頃から教え込まれたリアはここでの人工的に作られた動物や植物が不思議でならない。
リアのふるさとにいた美しい翼をもつペガサスも白いトラのような大地を司る聖獣、タイガーもいない。
大地の精霊も沈黙してしまった。風の精霊も、水の精霊も、沈黙
精霊達が見捨てればここは滅びるだろう
この『サイエンスシティ』には王の作った掟すら通用しない独裁者、シオンは確実に魔の手を広げて行っていた
「二層からの食糧補給が難しくなるならバイオ製造でなんとかするしかないわね。二層では力を使えないわ。使ったメグ達はやつらに捕らえられてしまったし。」
地下のコンピュータの中心を守るアカリの言葉にみんな深刻な顔をする
人質を差し出せば地下の暮らしを保障しようと言うシオンと言葉は嘘だ
まだこの三層にはきては居ないが二層にはシオンの手の者がはびこっている。
「バイオ製造も水の浄化はまだ成功してません。危険ですが最悪、ダビデから供給するしかないでしょう。」
バイオ製造の責任者、スバルが答える
「わかりました。もし最悪な事態の時は一族は全力でコンピュータ麻痺をやりましょう。」
リアと他の者もうなずく
地下の原動力『コア』はアカリ、リア前はリュウヤが中心を守ってきた
今はアカリとリアは交互に主力の力は尽くしているが二人の力ですべての力を補うのは難しくアマン、ジーク、テツの三人が力を分散させ地域の守りを固めている。
魔力を使えたり気を操るものはいてもコンピュータシステムに同化できる者は少ない、メグ達が捕まった今は五人しかいない
アマンには子供が二人いるがまだ幼なすぎる
電磁波に頼ればすぐに見つかるだろう
自分たちの力を人を支配し殺すことに使いたくないという思いは皆同じだ
武力と無縁にすごしてきた人々は戦いを話の中でしか知らない
「アカリ、だいじょうぶかしら?」
「手短に頼むわ。」
アカリがカリカリしているのはいつものことだ
「精霊達が消えて来ている。私も語りかけているけどみんなこたえてくれなくなったわ。私たちも移住を考えたほうがいいと思うわ。」
リアの言葉にアカリはためいきついた。
「リュウヤも他の仲間もいないのにどうやってやるのよ。」
「魔術よ、私たちと違う力を仕える人の中には空間移動出来る者もいるときいたわ。」
アカリが水のはいったパイプをすう。
「そんな力ある人がいるなら。あっ!イリに頼めばいいのよ。」
パイプをクルリとまわす
イリは地下の住民に手をかしてくれる魔術を使える者だ
「明確な計画がたてられるまでは内密にしときましょ。アカリ、変わりましょうそんなにカリカリしてたら支障がでるわ。」
部屋の真ん中のイスにリアはこしかけた。
「寝てくるわ。なんか調子わるいのよね。」
アカリは部屋からでていった。
リアは先ほどまで星を流れる気にリンクしていた力を電脳空間にリンクした。
空間は四角いパネルを敷き詰めた部屋のようになっている。
リアは巨大なタワーのような床もパネルを敷き詰めた空間にいる、リアが手を上にあげてユックリと両腕を下げる。
『リンク、リアに変わりました。』
機械化された声がひびきリアの両手から伸びる光がパネルタワーをかけていく。
『リア、変わってくれて良かった。アカリだと聞く耳もたないから困るんだよ。』
シルバーの髪の青年が表れる生身ではない映像だ。
ジークだ、この青年は一族の一員だが外部からやってきた人間だ、そのせいか何かあればアカリはすぐにこの青年のせいにする。
『リアは俺が外部からの情報を集められるの知ってるだろ?』
『何か良くないことでも?』
『嫌な情報が手に入ったよ。【ゴッド】の連中がサイボーグ、生身の人間に武器を混合させる実験をやめて実験に使ったモルモット達をみんなゴミと一緒にコンテナに詰め込んで捨てた。』
モルモットは動物ではない残酷な人体実験に使われる人間達だ。
『リョウマさん達に頼んですぐに救出に向かってもらうわ。ジーク、上を気にしすぎないで、水の汚染がひどくなってるわ、バイオ開発と製造に力を注いでもらいたの。』
ジークはコンピュータのリンクも出来るが外にある見えない電脳情報もわかるのだ。
『後もう1つメグ達の事がバレたのは電磁波リンクが原因じゃない、誰かが裏切ったか黒魔術師が何かしらの手段を使った可能性がある。俺も危険だから上を探るのはもう辞める。水はまだ地下水が有るからなんとかなるよ。』
ジークの姿が消える。
額になか指を置き一ヶ所に向ける。
ブンと音がして四角い画面が表れる。
『外部救出を頼みます!リョウマさんお願い出来ますか?』
『もう向かわせております。また地盤亀裂が起こりまして私はそちらに向かいます。』
黒の特殊スーツにヘルメットをかぶった男性がこたえる。
『地質調査をまた急いでやりましょう。医療部門、環境部門アクセス。』
額から更に二本光がでる。
『ヘレンさん、救出した人々の治療をお願いします。サラマンダーさんまた地盤亀裂がはじまったようなので調査をお願いいたします。』
休む暇もないたまにリラとモジャを混ぜた薬酒を飲む。
この中心で力を使うものは眠れないのだ。 これを二人でやるにはきつすぎる。
寝ていてもリンクの出来るリュウヤを人質として『ゴッド』に引き渡したのはつらい話だ。
おまけにアカリはジークを信じていないのだ。
つまりジークが担当するべきとこもアカリが力を注ぐことになる。
それでは限界もくるだろう。
それにしても最近、おおいきがする。
アカリはリュウヤのパートナでもある……子供がお腹に宿ったと言うことも考えられる。
そうなるとアマンとテツでリアが休むとき補わなければならない。
なんとかバリケードだけは守らないと。
バリケードが壊れたら『ゴッド』の魔の手はすぐに伸びてくるだろう。
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