第3話技術の進歩
「おはようございます、魔王様。本日も良いお日柄ですね」
「おはよう闇巫女よ。我輩の目にはいつも通りの曇り空にしか見えんが、まあ気分が良いなら結構だ」
「フンフフ~ン♪」
「………なんだ、いったい。何鼻歌を歌いながらくるくると回っている。何アピールだ」
「あれ、解っちゃいましたか?」
「わざとらしいんだよ。何かあるならさっさと言え」
「ほらほら、どうです? 何か気が付きませんか?」
「いや別に………、ん? そう言えば、今日はいつもの真っ黒なローブではないのか?」
「おぉー、流石は魔王様。良くお気付きで」
「馬鹿にしているのか?」
「いえいえまさか。本心からですよ、穿った見方は止めてください。
本気で、魔王様は気が付かないんじゃないかなと私は思っていたのです」
「馬鹿にしているのか」
「それより魔王様。魔王様の方こそ、御自身の変化に気付きませんか?」
「変化? いや、別に普通だが………」
「顔がイケメンになってますよ」
「そんな馬鹿な」
「本当ですって、鏡を見てください。いつもの邪悪なオーラを纏うやたら偉そうな
「馬鹿にしているのか」
「ほら、見てくださいってば」
「全く、見ても代わり映えしない顔があるだけウオオオ誰だこれっ!?」
「見事なノリツッコミです魔王様」
「言ってる場合か! どういうことだ、これは! お前がいつもこっそり読んでる漫画みたいな美青年になってるじゃないか!!」
「何で知ってるんですか?!」
「やっぱりお前の仕業か………」
「いえ、今回は違いますよ魔王様。私の本来の役職が関係ありますが、私の仕業ではないです。
………【啓示】があったのですよ、暗黒神様から」
「アイツから? どんな」
「アイツって………まあ、良いですけど。
えっと、詳しくは私も解らないので、言われた通り御伝えしますと………『解像度が上がったからキャラ絵をやり直した』とのことです」
「………は?」
「いえ、だから、詳しくは解らないのですよ」
「ふむ………詳しくは本人から聞くか。暗黒神を呼び出せ」
「えー、神を? それなんか凄く不敬じゃあないですか? 一応私は、暗黒神様に仕える巫女なのですけど………」
「今なら未だ、全てアイツのせいで済ませてやる」
「直ちに呼びます」
………………………
………………
………
『ふふふ………、久し振りだな魔王よ………。
我は暗黒神、闇を、魔を統べる邪悪の権化。言うなれば、魔族を支配する貴様よりも遥か格上なのだ。それをこうして呼び出す等とは………不敬であるぞ』
「す、すみません暗黒神様………、どうぞお怒りを御静め下さい………」
「………ギルティ、」
「魔王様何しようとしてるのですか?! 神様を相手に………」
「1発殴っておこうかなと」
「不敬っ!!」
「まあ落ち着け闇巫女よ。そして暗黒神、今は
「え?」
『あ、えー、まあいいか………。
解りましたッス、先輩』
「えぇ?!」
「言ってなかったが、我輩は元々は神だ。それがくじ引きでこうなった訳だが………こいつは、我輩の創造神育成学校時代の後輩なのだ」
「学校? 神様は学歴社会なのですか?」
「何事も、基本となるのは学問だ。無学な者にどんな世界を創造出来ると思うのだ?」
『先輩は、勉強も実技もトップだったのにくじ運はマジで悪いッスよね』
「………」
『成績良かった順にくじ引いて、一番に大外れを引き当てたッスね………ふふっ』
「ギルティ」
「落ち着いて下さい魔王様。御気持ちは解りますが、今はそれどころではありません」
「くっ………、解っている、こいつにはまるで悪気は無いのだと………! 昔から暗くて性格もねちっこくて我輩以外ろくに話す相手も居なかったからコミュニケーション能力が無いのだと!」
『ガハッ!?』
「暗黒神様が吐血しましたよ魔王様」
「気にするな、アイツはただ打たれ弱いのだ。直ぐに復活する。
それで、どういうことなのだこれは」
『これって、どれッスか………?』
「顔だよ! この、ちょっと引くレベルの美青年の顔の話だ!」
「気に入ってるんですか?」
「………少し」
『なら良いじゃないッスか』
「急な変化で気分が落ち着かんのだ。
お前が闇巫女に伝えたという、解像度っていうのは何の事だ」
『あぁ、詰まりあれッスよ。
僕たち神族や、先輩みたいな魔族は、根本的に魔力の塊みたいなもんじゃないッスか。あれ、人間や魔力の薄い生物にとっては見るだけでも毒みたいで、秩序神の先輩がフィルター掛けてるんですけどね。
代を重ねて、人間たちにもある程度免疫付いたみたいで。それを少し薄く出来たんスよ』
「フィルターを? ふうむ、いまいちピンと来ないな………」
『例えば………目が細かい膜だと、輪郭や何かはぼやっとしか表現できなかったッス。はっきり見えちゃうと、眼球が潰れちゃいますからね。
ところが、今回のだとそれがもっと輪郭を表現できるようになったッス。そうッスね………先ずはこれを見てください』
「………? 点が何個も打ってあるな」
『これがこれ迄の限界、ドット絵ッス。線を構成するには、見る側の能力が足りなかったンス。
では、こっち』
「これは普通の肖像画ですね。魔王様の部屋にも飾られてます」
『今回からは、詰まり次回からッスけど、こういう風に見えるようになったって事ッス。より細かい部分まで、描き出せるようになったって事ッスね。
となると逆に、それまでの絵じゃあ粗が目立つかなって思って。ほら、先輩の顔とかドクロでしょ? 300色以上仕えるのに白と灰色じゃあ味気ないなって』
「くっ………」
「ぷぷ、それは、確かに………」
『闇巫女さんは、黒一色だったッスけど』
「………」
「落ち着け闇巫女。悪気は無いのだ悪気は」
『積み木で表現してたものが、ナノブロック使えるようになったみたいな話で、となると細かいもの作りたくなるじゃないですか?』
「………なるほど。まあ、悪ふざけ以上の意味は無さそうだが………、しかしこれで、多少なりとも
「魔王様………なんて寛大な………」
「ところで暗黒神よ。その割りにお前の顔は、変わってないようだが………?」
『え? あぁ、それはそうッスよ。
いきなり自分の顔が代わったら気持ち悪いし落ち着かないじゃないッスか、だから、嫌だったんで変えなかったんですよ』
「「ギルティサンダー!!!!」」
………………………
………………
………
「………闇巫女。
『暗黒神を退ける
「………喜んでいただけたようですね、魔王様。気が済んだなら、鏡を見るのはもう止めてください」
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