ドグマ77「天上から降りてきた手紙」


 


 夢をみていた。

 いつまでも終わることのない夢を見ていた。

 いつまでも流され続ける意識のなかで、失われた色と音と風と悲しみのなかで。

 永遠にも思える夢の中で、自分は、目の眩むほどのあたたかい日差しに包まれる。


 そのすべての源のような熱の中心で、自分は、光をみた気がした。

 光の音を、光の色を、光の手触りを、光の向こうにいる誰かを、もう一度目にした気がした。

 

 もう一度出会った気がした。


 見失ったはずの誰かのぬくもりを、永遠に手にした気がしていた。

 数え切れないほどのまどろみと微笑みと痛みと憎しみが、混濁しながら溶けていく白い夢のほとりで。

 数え切れないほどの涙と絶叫と抱擁と感傷と殺戮が、流転しながら煉りこまれていく悪夢の畔で。

 

 自分は、歌っていた。

 いつまでもいつまでも眠るように歌っていた。

 ただ一切を受け止め、破れたのどで、あの手紙に浸された言葉の配列を歌っていた。その音の響きが、外の世界に対する心的張力共感のイメージが、世界を束ねる縫合の調律を狂わせたのだろうか。

 それは奇跡と呼ばれる言葉の理解を導くものなのだろうか。


 暗闇にぽつぽつとともし火が浮かび始め、自分がどんどん浮上していって、

 狭苦しい街の片隅の、小窓に揺れる明かりがその姿を照らして、

 視界が、もう一度接続し――、

 目をあける。







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