第2話
「私たちと一緒に、旧人類を滅ぼさないか?」そう言って、差し出された手はとても小さかった。
一瞬、その手を受け取ろうか迷った・・・・・・。
だが、何故だかわからないがその手を受けとってはいけない気がした。
「ふぅー・・・・・・」しばらくの間手を、伸ばしていた少女はため息を吐いた。
そして、静かに言った。
「どうやら時間切れのようですね」遠くを見つめながら言った、少女の周りには少女と同じような黒い服を着た男が数人立っていた。
「イヴ様、お時間です」黒服の一人が少女に向けていった。
「残念ながらお時間のようです。まぁ、あなたが新人類として覚醒しているのでまた会う機会もあるでしょう。返事はその時にでも、聞かせてもらいましょうかね」そう言って、イヴと呼ばれた少女は目の前から消えた。
幻覚などではなく、文字通り目の前から消えたのだ。
あれも言っていた能力の一つなのだろうか。
「俺の能力ってどんなやつなんだろう・・・・・・」そう呟いた、俺の問いに答えてくれる人はいなかった。
・・・
「イヴ様、よかったのですか?」部下の一人が質問してくる。
大体なんのことかは、わかっているがあえて聞き返す。
「なにがだい?」そう白々しく言った私に、部下は丁寧に答える。
「先ほどの、青年の事です。我らの同胞だったのでしょう?」
「あぁ、そうだよ。だけど、今は放っておいていい」私の言葉に少し驚きの表情を見せたが、すぐに無表情戻り再び聞いてきた。
「それは、なぜです?同胞なら今すぐでも歓迎すべきでは?」
「今は、時期ではないですよ」
部下は、困惑の表情を浮かべていた。
「まぁ、そうのち彼の方からこちらに接触してくるはずです。新人類となった彼の進化はもう誰にも止めれませんからね。そうでなくとも、この世界は私たち新人類にとっては生きにくいですからね。」
その答えに納得したのか、諦めたのかはわからいないが部下はそれ以上聞いてこなかった。
・・・
「みんな・・・・・ごめん」そう一言だけ告げ、教室をあとにした。
正直もう耐えられる気がしなかった。
みんな、変わり果てた死体を見ていると一人だけ生き残ってしまった罪悪感に押しつぶされそうになる。
その罪悪感から逃れるために教室を出たが、どこの教室でも同じような状況で見知った顔があると胃酸がこみ上げてきて吐いてしまう。
未だに、生きた人に会わない。
もうこの学校で、生きているのは俺だけかもしれない。
フラフラした足取りで、校内を何周も回った。
だが、何回回ったところでそこにある死体が動くことはなく5周を超えたあたりから死体を見ても何も感じなくなった。
フッとまだ回ってないない場所があることを思い出した。
それは、生徒会室である。
なぜ今まで、あそこに行かなかったのかはわからないが最後の望みにすがりつくようにフラフラと生徒会室に向けて歩き出した。
歩き出すと意外と遠い。
いつもこんな長く感じたことは、なかった道のりがとても長く感じる。
今まで、気がつかなかったが階段にも相当な量の血や体の一部が飛び散っている。
(ようやくたどり着いた)
やっとの思いでたどり着いた、生徒会室の扉の前に立ちフッーとため息をつく。
いつも通り、扉を開けようとドアノブに手をかけ、扉を開ける。
その瞬間、振り下ろされた棒で頭を殴られ、俺は気絶した。
気絶時に、桐谷の顔が見えたきがした。
・・・
真っ暗な世界の中にいた。
何もないただ真っ暗なだけの世界。
その中で、ただひとり息だけをしていた。
立っているのか、寝ているのか座っているのか、自分の体勢すらもわからなくなってきた頃目の前の空間がヒビ割れ始めた。
ヒビの中から出てきたのは、この世界とは対照的な真っ白な化物だった。
その化物に、俺は抵抗するすべなく頭から飲まれた。
・・・
目が覚めるとあたりは既に暗くなっていた。
床に寝かされていたせいか、腰や背中が痛い。
(そもそも、なんで俺床で寝てんだ?)ドアノブに手を掛けたあたりまでは覚えているが、そこら先を覚えていない。
周りを見渡した限り、生徒会室で間違いないようだ。
本当になんで寝てたのかわからなくなってきた。
しかし、ここにも人はいないようだ。
「ここからどうすっかなー」立ち上がり伸びをする。
タイミングを計ったかのように、
目が合ったまま、何かを言おうとしても言葉がうまく出てこない。
それは、桐谷も同じなのか口を開きかけては閉じ、また開きかけては閉じてを繰り返している。
「先輩・・・・・・生きてたんですね」久しぶり聞いたように感じる人の声は、とても心地の良いものだった。
「その言い方だと、俺に死んでて欲しかったみたいな言い方だぞ」
「そんな意地悪な事言わないでくださいよ~」
「悪かったよ、俺もお前が生きていてよかったよ」本心からでた言葉に、嬉しそうに微笑んだ桐谷を見て不思議と幸せな気持ちになった。
「そろそろ、入って良いだろうか?」そう言って生徒会室に黒く長い髪を翻し入って来たのは生徒会長である一ノ
今までのやり取りを見られていたのかと思うと、少し恥ずかしくなるが今は生きていた事を喜ぶべきだろうと思う。
「会長生きてたんですね。てっきりあの爆発に巻き込まれて、死んだものだと思っていました」
「残念ながら、私のクラスから一番遠い場所だったのでな。運よく生き残れたよ」
バチバチと火花が出そうなほどににらみ合う。
「まぁ、少しでも生き残りいたのは良い事だ。それが、貴様のような雑魚でも囮ぐらいには使えるからな」
「言うじゃないか。心臓まで凍っていると言われている人物は、人を人として見てないのか?」
その様子を見かねた、桐谷が口を挟んできた。
「もうそんな子どもみたいな喧嘩はいいので、会長は今の学校の状況と先輩は何があったのかを話してください」かなり、ご立腹の様だ。
「あぁ、すまなかった。この男があまりにも役に立ちそうに無かったのでな。せめて、何か役に立つことを教えてやったのだ」
(コイツ・・・・・・まだやる気か?)
「ハァー」とため息をつきつつも、何があったかを話始めた。
新人類を名乗る化け物が襲って来たこと、そして仲間にならないかと誘ってきたこと。
会長は、無表情を崩さす俺の話をじっと聞いていた。少し、意外だった。
桐谷は桐谷で、コロコロと表情を変えながら俺の話を聞いてくれた。
「そうか・・・・・・だったら、これ以上の生存者はいないかもな」
「これ以上って事は、生き残りは俺らだけなのか?」
「いえ、違いますよ〜。私と会長の他にも、書記の
「今の現状は、大体わかったが今後はどうしていくつもりなんだ?」
「そうだな・・・・・・ここにいても安全だとは限らないからな。生存者がいないかもう一度探した後に、私の家に向かおうと思う」
「学校を出るのか?それにお前の家が安全とは限らないだろ?」
「そんな事を言い出したら、この学校もいつまでも安全と限らない。それに・・・・・・」少し顔をしかめた後、消えそうな声で言った。
「ここにいることに、私自身が耐えられそうにない」
その意見に関して言えば、同感だ。
こんな、知り合いの死体が至る所に転がっている場所にいつまでもいたいとは思わない。
「しかし、新人類というものは厄介だな・・・・・・」
「と言うと?」
「だってそうだろう?ただでさえ私達より、身体能力が高いのに特殊な能力も一つあるのだろう?そんな奴らを相手にどう応戦すればいいのだ?」
この会話を聞いていた桐谷がバツが悪そうに小さく手を挙げながら言った。
「あの〜私も新人類として、能力が解放されているみたいなんですよね〜」
「「えっ?」」俺と会長の間抜けな声が生徒会室に響いた。
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