第1話

カーテンの隙間から、朝日が漏れ顔を照らす。いつもこれぐらいの時間に、浴びる日光で目が覚める。


両親は、共働きで基本的には家にいない。たまに帰ってきても、いつも忙しそうにしている。


手早く身支度を済ませ家を出る。今日は、珍しくそこまで寒さが厳しくないようだ。

春に変わりつつある風を、自転車に漕ぎながら肌で感じる。


駐輪場に自転車を止め、自分の教室に向かう。


教室には、電車やバス通学の人達がもう着いていた。

適当に挨拶をしつつ、自分の席のある窓側の一番後ろへ向かう。


席につくと、鞄から筆記用具と本を取り出す。

そして、そのまま静かに読書を始める。


ーーー世界崩壊まであと2時間35分



・・・

物理の授業中、冬の時期には珍しく夕立が降りだした。

グラウンドで体育をしていた生徒達が体育館に入っていく。

雷も音は、小さいが鳴っている。

なぜかとても不吉な予感がした。

天気が悪いせいだろうか・・・・・・。


少し気にはなったが、すぐに授業に集中する。


ーーー世界崩壊まであと5分


・・・

すっかり夕立はやんだようだ、まだ重々しい雲がいくつか残っているがその内にどこかに消えるだろう。


外をボーっと眺めていると、校門の近くに人が立っているのが見えた。

最初は、用務員の人かと思ったがどうやら違うようだ。

まず、服装が怪しすぎる。


(全身黒ずくめって怪しすぎだろ。)


内心でそんな事を、毒づきつつ眺めてるとその怪しげな格好した人物が校内に入ってきた。


(おいおい、入ってきたよ。これ、大丈夫か?)


怪しげな人物が入って来てから、一分もしないうちに一人の教師が出てきた。


その教師は、月島といって生徒指導の先生で怒ると鬼のように恐ろしいことで校内で有名だ。


(あぁ、あの不審者死んだな。)不審者に対して同情する。


(よりによって月島先生になるは・・・・・・運が悪すぎる)


不審者に、月島はどんどん近づいていく。


また不審者も歩みを止めることなく、まっすぐこっちに向かって歩いてきている。


さっきまでは、距離が遠くて見えなかったがどうやら不審者は女の子のようだ。

年齢は、14、5歳くらいだろうか。


気が付くと、女の子の手には長さ50センチほど棒が握られていた。


(あれ?あんな棒さっきまで持っていたっけ?)そんな不安をよそに月島は、女の子に近づき声をかけていた。


女の子は、棒を持っている方の腕をあげた。そして、そのまま軽く月島の頭をコンッと叩いた。


どんな怒り声が、飛び出すかと思って月島を見ていたが何もしなかった。大人の対応というやつだろうか・・・・・・。

しかし、そんな考えは一瞬で揉み消された。

なぜなら、月島の顔がぶくぶくと膨らみ始めたからだ。


そして、極限までに膨らんだ顔は耐え切れなくなりやがて破裂した。

目の前の光景を、目の錯覚、夢ではないかと疑った。

こみ上げてくる、吐き気を我慢出来ず教室の床に嘔吐する。


物理の先生や周りの生徒達が心配そうにこちらに声をかけ、保健室に行くように促してくる。

俺自身もそれに甘えてこの場を離れようとした時、教室の前の方が大きな音をたて吹き飛んだ。

その衝撃は、凄まじく俺は教室の壁に打ち付けられた。

そして、そのまま意識を失った。


どれぐらいの間、気を失っていたのだろうか?

壁に打ち付けられた衝撃で、全身が痛み、まだ頭がクラクラする。


顔を上げ、辺りを見渡すと飛び散った窓ガラスの破片やコンクリートの壁の破片、半分に割れた黒板。そして・・・・・・おびただしい量の死体。


上半身が無いものや下半身が無いもの、頭が半分無いもの、関節がありえない方向に曲がっているもの、かつては級友だった者達の無残な姿を見て再びこみ上げてる吐き気を我慢出来ずに床にぶちまける。


「おやぁ?まだ生き残りがいましたか」おどけた様子で言ってきた声の主は、先ほどの月島を殺した黒装束の女の子だった。


「まぁ、今から殺して皆さんと同じ場所に送ってあげますらね」そう言ってこちらに、ゆっくりと近づいてくる。


(このままだと、殺される)体を動かそうと試みるが、うまく動かせない。


ゆっくりと歩み寄る悪魔のような笑みを浮かべた少女からは、今まで感じた事のないような恐怖を感じる。


そして、その先にある絶対的な死という感覚にに飲み込まれそうになる。


(嫌だ。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない)歩み寄る死は、嘲笑うかのようにゆっくりと迫ってくる。


「死にたくない・・・・・・」そう呟いた時、カチリと何かが外れた音がした。

気がつくと体が勝手に動いていた。

そして、勝手に動いた体は驚くべき程に軽く自分の体ではないようだった。


そのまま流れるように、少女の顔を思いきっり殴った。


バキッと鈍い音が、室内に響き殴られた少女の体は異様な速さで壁にめり込んだ。


「なんだこれ・・・・・・」立っているだけで、体の奥底から力が湧いて来るような感覚と先ほどの殴った気持ちの悪い感触がまだ残っている。


「以外とやりますねぇ今のはなかなか、痛かったですよ」めり込んだ壁からで出来た少女は、何事も無かったかのように言葉を発した。


「しかし、おしいですねぇ。覚醒してしまってはあなたを、殺せない」本気で残念そうな声で、発した言葉から再び恐怖がこみ上げる。


その恐怖に耐えながら、少女に問いかける。

「教室をこんな風にしたり・・・・・・皆を殺したのはお前か?」発した声は、所々震えてしまった。


少女は、満面の笑みを浮かべ答えた。

「はい、私がやりました」


「なぜ、こんな事をした?それに覚醒したってなんだ?」


「まぁまぁ、そんなにいっぺんに聞いてこないでください」やれやれといった様子でこちらをみていた。


「えーと、なぜこんな事をしたかでしたねぇ。その理由を教える前にのことをお話しなければなりませんねぇ」そう言った、少女は語り始めた。


「私達は、人類を超越した新たなる人類『新人類』と言います。そして、私達の目的はただ一つ・・・・・・旧人類をひとり残らず全滅させることです。その決行日が今日で、私はたまたまこの学校だったという訳です」


(本気で言っているのだろうか?)疑わずにはいられなかった、しかし今の状況を見る限り全て本当の事なのだろう。


考えれば考えるほど、頭の中はごちゃごちゃに混ざり、吐きそうになる。


そんな、俺の頭の状況をしってか知らずか少女はニコニコしながら説明を続けた話をすすめる。


「普段、人の脳はどれだけ使われているか知っていますか?」


急に振られた質問に、答えれずにいるとヤレヤレといった様子で少女は続きを話始めた。


「普段、人の頭は約5~8%ほどしか使われていないと言われています。残りの95%は未知の可能性が秘められていると言われ、まだ誰も見たことのないような特殊な力が眠っていると言われています。ここまで言えば、新人類とはなにかわかりましたか?」


「その95%を使える者のことか・・・・・・」


「正解です。そして、その95%をどのようにしたら使えるようになるのか。その方法は、至ってシンプルでした。自分が、どれだけ『生きたい』と強く願うかです。」ケタケタ笑いながら、そして天を仰ぎながら言った。


「では、人はどういった時に強く生きたいと願うか・・・・・・それを、教えてくれたのは皮肉にも旧人類だったよ」そういって、少女は着ている服を脱ぎ始めた。


パンツ一枚になった少女の体には、生々しい傷が至る所についていた。


「それは、至ってシンプルだったよ。絶対的な『死』という感覚を味わえばいいのさ」その顔に、一切の笑みはなく、ただ冷たい目で真っ直ぐ俺を見ていた。


「それだは、君の質問に答えようか。君は、私に聞いたねなぜこんな事をしたのかと・・・・・・目的の一つは、旧人類を殲滅すること。そして、もう一つは君のように新人類として覚醒した者を見つけるためだ」


そこで、一旦言葉をきり、先ほどまでとは打って変わったような笑みでこちらを見ながら続きを話始めた。


「私たちと共に、旧人類を滅ぼさないか?」


少女は、こちらに手を伸ばし諭すように言った。

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