退屈なこの世界で

火担当

プロローグ

この世界は、退屈である。

高校2年の冬、授業中窓側の一番後ろの席から外を見ながら『相澤あいざわ れい』はフッと思った。


なぜなら、この世界は生まれた時点で自分の人生が決まっているからである。


勉強にしろ、運動にしろ、努力をすれば大概のことは何とかなる。

そんな妄言を言ったやつの顔を今すぐにでもぶん殴ってやりたい。


はっきり言って、反吐が出る。

自分が出来るから周りも出来るという盛大な勘違いだ。自分のお高い理想を押し付けてくるな。


そんな事を、考えていると授業の終わりのチャイムが鳴る。


勉強道具を鞄にしまい、重たい腰を上げ教室を後にする。今からが一番憂鬱な時間だ。


廊下を曲がり、階段を登って最上階までいき、その階突き当たりにある教室・・・・・・生徒会室がある。これでも、一応副会長をやっている。


生徒会室の扉を開けると、もう先客がいた。

一年生で役員に立候補し、見事に当選した茶色い髪と目が特徴的な『桐谷きりたに かえで』だ。


一年生の教室は、一番遠いはずなのだが・・・・・・。


「相変わらず、早いな」声を掛けながら、桐谷の前の席に座る。そのまま、鞄から本を取り出し読み始める。


「そうですか〜?普通ですよ〜」そう言いながら、桐谷は立ち上がり俺の横の席に移動する。


特に席が決まっているわけではないが、別に誰もいないので広く使えばいいと思うのだがなぜ横に来るのだろう?


「先輩、今週の日曜日暇ですか〜?」


「暇だけど」嫌な予感しかしない。


「うわっめっちゃ嫌そうな顔してる。まぁいいですけど、遊びに行きませんか〜?」


そんなに顔に出てたか・・・・・・まぁ、いいや。

「断わる」


「え〜なんでですか〜?こんなに可愛い後輩が誘っるんですよ」と上目遣いでこちらを見てくる。


「確かに、お前は可愛いが相手が悪かったな。俺に、それは通用しない。」桐谷が可愛いのは、認める。学年・・・・・・いやヘタをすればこの高校で一、二を争えるくらいの美少女だ。


そういえば、サラッと結構恥ずかしいことを言ったな俺・・・・・・。


本を読むのを中断し、桐谷の方を見る。


最初は、キョトンとしていたがどんどん顔が赤くなっていった。


「ありがとう・・・・・・ございます・・・・・・」指をもじもじさせながら、顔を真っ赤にして言ってきた。


それから、20分程恥ずかしくさと気まずさで会話が全然続かなかった。


「ん?そういえば、皆遅いな。そろそろ来てもいいぐらいなのに」フッと俺達以外誰も来ていない事に気づいた。


「え?あぁ、生徒会長は、今日は外せない用事があるとかで休みですよ。他の役員の方達は、部活動の大会が近いとかで休みです」そう淡々と答える桐谷を見て思った事が一つある。


「なんで、お前が知ってて俺が知らないんだよ・・・・・・俺、副会長だよな?」


「そうですよ〜。忘れたんですか?」フフッと笑いながら桐谷は答えてくれた。

その日は、誰も来ないままゆっくりと時間が過ぎていった。

その間ずっと、桐谷と雑談をしていた。不覚にも、こんな日も悪くないと思ってしまった。


気づけば、下校時刻が近づき放送部の放送が入る。


「そろそろ、帰るか」本を鞄の中にしまい、桐谷に声を掛ける。


「そうですね〜帰りましょうか〜」そう言って、いそいそと帰りの支度を始める。


生徒会室の鍵を締め、職員室に鍵を返した後駐輪場に向かう。


靴を履き替えて、外に出ると冬の冷たい風が肌を指すように吹く。

「寒っ!」


俺の自転車の前には、何故かバス通学の桐谷がいた。


「せんぱ〜い。バス乗り遅れっちゃったので乗せていってくださ〜い」


「いやいや、桐谷さん?俺達、一応生徒会の役員だよ?そんな俺達が、校則を破っていいと思う?」


片桐は、ニヤニヤしながら凄く低く冷たい声で言った。

「いや〜何言ってるんですか?そんなつまらない事をどの口がいっているんですか?」


えっ!?女の子ってこんな怖い声出せるの・・・・・・


そんな桐谷の怖さに負け、自転車の後ろに彼女を乗せて自転車を漕ぐ。


「先輩、今週の日曜日忘れないでくださいね〜」後ろからそんな声が聞こえた。


「覚えてたらな」


「ちゃんとメール送ります」


しばらく、自転車を走らせると桐谷の家に着いた。


「ありがとうございます!先輩!」そう言って、笑顔で家の中に入っていった。


それを見届けたあと、改めて帰路につく。


こんな、当たり前の日常が突然壊れてなくなるとは考えもしなかった。




ーーー世界崩壊まであと16時間45分

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