第104話 お迎えが来る俺
「頼もう」
外から声が掛かる。
――はて、サーリムが番をしてた筈だけど。
「私が出ます」
アルマが扉に向かう。
迎えが来たのかな?
アルマが扉越しに声の持ち主と話をしている。
外の馬蹄の音が煩くて喋り声がよく聞こえない。
扉が乱暴に開くと身なりの良い白い服を着た人物が護衛らしき人間と一緒に入ってきた。
アルマは扉に押されよろめいて座り込んでしまっている。
白い服を着た人物が俺の前に跪くと喋り初めた。
「シンゴ殿。初めまして。私は教会の使者のオルハンと申します。お騒がせして申し訳ございません。やっとお目に掛かることが出来ました。早速ではございますが、我らと教会総本部にご一緒下さいますようお願いします」
ベラベラ喋る坊主だな。
いや、坊主じゃないのかな?
ガリガリだけど背が高い。180cm以上ありそう。綺麗な手をしていて肉体労働をする雰囲気はない。如何にも能士っぽい感じ。でも怪しさプンプンするね。ホイホイ付いていって大丈夫なんだろうか。
「……サーリムはどうした? 扉で番をしていた筈だが」
「あの者は、我ら迎えが到着したことで任務が終了した模様で教皇の元に報告に行くと言っておりました」
オルハンは平素な顔をして返答してくる。
――えっと。何かおかしくないか? そもそも俺の祝福が危険だからサーリムの祝福が必要なんじゃないの? それに変わる祝福持ちがいるってこと?
好都合なのかな? このまま逃げるか。でも誰かの庇護下に入らないと追われる状況は変わらなさそうだし……
教会からの迎えって教皇の迎えとは限らないじゃないの? 「消防署の
「教会? 教会からの迎えと仰っていたがどちらの派閥だ?」
って真正面から聞いてどうすんだ俺。
オルハンが若干目を細めて答えてくる。
「ほぅ。シンゴ殿は我ら教会のことに詳しいご様子ですな。左様。人が集まれば派閥が出来るのは当然のことですな。しかし、シンゴ殿をお呼びすると決めたのは教皇であり教会としての統一した考えですので派閥云々は関係ございません。……一部の跳ねっ返りがシンゴ殿を害を為そうとした者もいたようでしたので、その者達は処分いたしました。私、オルハンが教会を代表して謝罪させていただきます」
随分と口が回るおっさんだな。こんなに長くベラベラ喋られると胡散臭さが倍増してくるんだけど。
チラッとアルマを見ると護衛の一人が付いて見張られている様子だが、オルハンについている護衛が微妙に視線を遮っているのでどうなっているのかが良くわからない。
「……付いて行きたくないと言ったらどうなる?」
「それは我々としても困ってしまいます。ご存知かわかりませんが、この国や隣国もシンゴ殿を拐かそうと狙っております。我々もここに来るまでの間に様々な妨害がございました。しかも、厄介な祝福持ちもいるようです。間もなくここも察知されるでしょう。お気に入りの彼女もお連れになられても構いません」
オルハンがアルマを流し見ながら口角が少し上がる。
なんだかイラッとするが、相手の知っている情報を引き出さないといけないな。
「厄介な祝福持ちとは?」
「それは
「……ガルはどうした?」
「あの者は撹乱のために他所へやっております」
――整合性が取れているようないないような。ガルとサーリムが居ないのも理解はできるが……
「では、俺の祝福のことも分かっているのか? 知っていたらお前達も……」
「存じ上げております」
オルハンは皆まで言わさずに護衛の一人に流し目を送ると素早く俺の肩に手を置く。
「なっ何を……」
バチンと音が鳴った様な音と共に電流が流れたような痺れが体に走り気を失った。
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