第87話 新兵器? な俺
今の家は一箇所しか出入口がない。
つまり山の上に建てた砦に逃げるためには正面の扉からじゃないと向かえない。これだと正面の扉を固められた時に逃げ出せない。秘密の脱出経路を作る必要がある。
――秘密の通路。
響きがいいね。木の上のツリーハウスに並んで小さい頃に憧れるものだね。
家の床板を四角く切って床下へ行ける扉状にする。その下を掘って塀の外に繋げる。そのように人形に命令する。俺は掘らない。疲れるし何より落盤が起こったら誰も助けてくれないからな。
しかし、掘ってもなかなか進まない。一日で2m掘れれば上等だ。
塀を乗り越えて逃げるためにハシゴやらも用意したが、再びここへ襲ってくる敵がすぐに来ないことを祈るばかりだ。
――当分これないと思うけど。
さて、人形の量産をしないと。
今では人形が人形の原型を作れるぐらいになっているので比較的簡単に量産できる。しかし、現在の技術力だと接近戦ではどうしても素早さがたりなくて太刀打ち出来ない。鉄人も接近戦では足止めできるがそれ以上のことは出来ない。
ここはやはり遠距離で戦う事で凌ぐしかないな。近づかれたら逃げる。
既存の弓矢人形やゲリラ人形もいいのだがもっと簡単な構造にして量産だな。
手近な材料を武器にできるといえばあれか。
――新型人形の完成だ。
石を投げる人形。石を貯めておくレールを作り、腕を振り下ろし遠心力で石を投げる。要はピッチングマシンだ。名付けて投石人形【松坂君】だ。時速158kmで石を投げられる。飛んで行く石に当たったら鋼鉄製の鎧を着ていてもきっと凹むだろう。
新兵器として銃が出来ないか考案してみた。
火薬が無いのでアルコールやバイオエタノールを爆発させて弾の推進力を得るか。ただ、液体なので取り扱いが難しい。それに、噴霧した状態にならないと爆発的な燃焼を得られない。
次に銃本体だが鋳鉄の強度がそれほど良くない。鉄の固まりを飛ばすだけのエネルギーが得られたとしたら多分破裂する。俺の身が危ない。
弾を作るにしても鋳鉄なのでバリがでる。このバリを削り取るのが大変。ヤスリが1本しかない。すぐに鈍ってしまいそうだ。ヤスリを作るにも目を立てるための鏨を作らなければならない。
道具を作るための道具をつくるパラドックスにはまっていく……。
銃を作るのは諦めるのが無難だな。
あと役に立ちそうなのは捕獲か。
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