第85話 ネクロマンサーな俺
次の日、すれ違う人もいなく無事街の近くまで辿り着いた。
――別にいいんだけど、道行く人にもあわないなんてどれだけぼっちなんだ。
ぼっち体質もいい加減にして欲しいが誰に文句を言っていいか分からない。
――周りに誰もいないからな。
愚痴も聞いてくれる人もいないが、俺にはこのゾンビ、もとい、仏様の群れがいるからな。
ひっそり街に近づくつもりだったけどこのゾンビ達、もとい、仏様達が目立ちすぎて隠す場所がない。80体近くまで膨れ上がってるし、ナイフぐらいは手に持っている。いざとなったら人数で圧倒できるだろうと考えて群れに紛れて街を取り囲む城壁まで歩いて行く。
前回同様に城壁外にあるスラムから街に潜入するつもりだ。果たして前の抜け道が使えるのかどうかが心配になってきたが。
スラムの中に入ったが以前に増して人の気配が無い。前回は路上で座っている人影もあったがそれも無い。
――まさかな。
何やら嫌な予感がするが。
記憶を頼りに城壁に穿たれた抜け道に行くが番人もいなく、そのまま素通りで街に入ることができた。
街の中に入ると、様々な臭いが漂ってきた。腐敗臭、汚物臭、肉を焼いたような臭い。一言で表すと臭い。とても臭い。前回も臭いとは感じたがこれほどの臭いは感じなかった。
ゾンビもとい…… もうゾンビでいいか。
ゾンビ達を連れて行くとさすがに始末に負えなくなりそうなので城壁の穴の場所に置いておく。退路を確保ってやつだな。
大通りに出ないように歩いて行くと、街の中心部から大きな煙が立っているのが見えた。火事か? と思いつつそちらに向かい歩いて行くと広場に出た。
物陰から覗く。
果てしなく臭い煙が立っている。大きな焚火をしている様子だが、よく見ると燃やしているのは人間だ。動いていないので死体を燃やしている。死体が小山になっているので相当な量だと思う。
死体をどうやって運んだんだ? 伝染病かもしれないので燃やすのは正解かもしれないが、人の手を介して運ぶのは悪手だと思うな。
辺りを見渡すと兵士らしき人々が薪をくべていたり、見張っていたりする。共通しているのが布で鼻と口を布で覆っている。
――臭いんだろうな。
どうしてこんな大量の死体があるのか……。良くわからないが街に生気がない。生活している気配が無い。
戦争じゃなかろう。争いごとの雰囲気なんてなかったし。
なんかの病気が蔓延したのかな。伝染病だとしても全員死ぬほどの致死率を持った病原菌など聞いたことが無い。
ここに来る道すがら拾った死体達は何処かに移住するために街から出て行った人々だったのかもね。……出て行かなくても手洗いうがいをすればだいぶ違うのにね。
……待てよ。手洗いうがいは水を使う。水は井戸から汲む。井戸には死た……。
ダメだ。考えてはいけない。危険が危ないデンジャラスな連想ゲームだ。
俺ではない。あくまでも俺は被害者だ。俺は襲われたから反撃したまでだ。正当防衛だ。憲法第9条だ。
――帰ろう。
この様子であれば当分俺に構う暇は無いだろう。
あのゾンビ達も供養をしてやるか。あのままだと被害が拡大しそうだしな。
俺は穴から街を出るとゾンビ達に命令する。先ほどの焚火に向かい焼却されろと。
惨状を思い出し、ふと思った。
――アルマは生きてるのだろうか。
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