第40話 人を発見する俺

 目が覚めるとまた崩壊した家々を物色していく。


 この村の家は全て木造だった。

 できれば釘なども拾って行きたかったが、釘もあまり使っていないようで単純な木組みで家を組んであるだけだった。あまり地震なども起こらない地域なのだろうか。


 目ぼしい物を拾って一つの家に集めてみる。

 鍋類が一番多かったがあまり沢山持っていけないし、しようがないので大中小の一組を確保。

 焼けていない家から俺に合うサイズの服を数着。ロープを一巻き。鉄線が少し。

 食料はなかったし、農具もなかった。

 ガラス類も破片すらなかったのでガラス製品もないのだろう。



 中天となり家の中で品定めしていると遠くから馬の嘶きが聞こえ、周りを警戒しているエバが俺のいる屋内に飛び込んできた。

 エバが指を指している方向に崩落している家の壁の影から覗きこんでみると、俺が歩いてきた方角から馬に乗った人が2組早駆けで街道を走り周囲を見回している。


――人だ……この世界にも人は居たんだ……。


 妙な感動が胸に広がったが、ここを飛び出していって掻き抱くほど警戒心がないわけではない。

 お揃いの鎖帷子のような防具を装備し、ヘルメットを被っている。腰にはサーベルと馬具に短い弓をぶら下げている。

 2頭はこの村跡をぐるっとひと回りし、いま来た道を戻って行った。

 

――ここにいるのは危ないかもな。


 お尻がムズムズしだし何か嫌な予感がするので、荷物を頭陀袋に詰め、漁っていた家を飛び出し村の端に茂っている森にまで走りぬけ、木の上に隠れるように村を全体を視野にいれる。  


 小半時、馬が去っていった方向を見ていると隊列を組んだ人の群れが歩いてきた。。


――あいつら……軍隊か?


 先頭の人物は騎乗し、槍状のものを担いだ人々がその後を追うように歩いている。

 先程この村に先行してきていた2人組は、村の外周部をグルグルを走り回っている。


 やがて、人々は村の中心部の広場に辿り着くと、槍を担いだ人々が二人一組になって、村の家々を見まわり始めた。


――あそこにいたらもしかしたら捕まっていたかもな。


 捕まらないかもしれないが行動中の軍隊に接触していいことはあまり想像できない。


 全ての家を見回り終わると広場で食事をし始めた。


――街道で虐殺をしていたのはこいつらなのかな。


 街道で死んでいた奴らは鎧などの防具はしていなかったのでその可能性もあるかもしれない。それどころかこの村に斥候を飛ばして警戒をしているようなので、この村を襲ったのも彼らもしくは彼らが所属している軍かも知れないってことだ。

 民間人を襲ったり徴税できる可能性のある村を殲滅しているってことは、到底接触できる奴らではない。


――ここは大人しくしてやり過ごすのがいいだろう。


 こうなると我が家を要塞化したのは正解だろうし、更なる武装強化をしなければならないかもしれない。ただ、あの家にずっといるかどうかは悩ましい問題だが。



 奴らは食事が終わると隊列を整え、街道沿いに行軍を開始し、この村から出て行った。

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