第37話 食の発見する俺

 重曹鉱石を取りに行く時に通い慣れている道を歩いていたが、ふと気づいた。


 よく鹿に遭遇するポイントがあり、俺が姿を見せるとすぐに逃げって行ってしまうがその鹿が崖から滲み出ている水をペロペロなめているらしい。

 この辺は小川が沢山流れており水に不自由することはない。

 しかも、そこに至るには急勾配を登っていかなければいけない。

 つまりこの滲み出ている程度の水を舐める必要はないはず。


 気になったので滑りながら近寄ってみると川になるレベルには生らない程度の水が滲み出ている。

 鹿がなめているので害はないと思われるので手に浸して舐めてみた。


――ショッパイ!


 塩だ! 塩の味がする。

 ちなみに犬は塩の味が分からないらしい。ってそれは置いておいて。

 野生動物も塩分が不足すると岩塩とかを食べるらしいからな。

 ここに集っていた鹿も塩を補給するためにここに舐め取りに来てたんだ。


 これは塩泉ってやつだと思う。重曹には塩分が含まれてるって聞くし、それが雨水に溶け出してあーなってこーなると塩になるのかな。反対かもしれないし、全然関係ないかもしれないけど。

 よく見ると滲みだし流れている外側は塩の結晶らしきものが薄っすらと貼り付いている。



 思わず指でこそげ取り舐めてしまう。


――旨い。塩ってこんなに旨いもんなんだ。


 塩の旨味にやられて少し動けなかった。


 その後、持ち帰り方を検討するも上手く集められない。

 滲みだしているだけなので竹の水筒には汲めない。

 塩結晶も僅かにあるだけ。

 後日、要検討とは思っても、なかなか諦めきれない。

 これであんなことやこんなことが出来ると考えると汲めない水筒を押し付けたり、手で集めようとしてみたり、無駄な努力をしてしまうのであった。



 結局、一度家に戻り、3着しかない服の1着を切り裂き、布にして綺麗に洗い、竹の水筒と一緒に持っていく。


 布に塩水を染み込ませて水筒の上で絞る。

 染み込ませて絞る。

 染み込ませて絞る。


 と、地味な作業を繰り返し、水筒いっぱいにする。

 水が濁っているのは気にしてはいけない。


 塩水が500ccぐらいか。

 これを鍋で煮詰めていく。

 

 とろ火でじっくり時間をかけて煮詰めていくと大さじ一杯分の塩が採れた。


 これで料理の幅も広がるだろう。

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