第34話 備える俺

 帰り道に面白そうな植物があったが荷物が重すぎて寄り道はしなかった。

 昨日からの収穫物を並べて悦に入る。

 大工道具や武具や衣類や籾付きの小麦。


 特に小麦は燕麦とは違う種類のようなので期待している。籾付きってことは植えて増やせるってことだ。

 大工道具は人形作りに大いに助かるに違いない。金床を置いてきたのは心残りだが。


――また取りに行くか。


 取りに行きたいと思うが、生活に掛かる時間を削らなければならないので、週に1度の遠征が適当だ。特に人形は直ぐにぶっ壊れる。2週間にに1体は壊れるので新調しなければならない。

 それに、争いがあった事実が心配だ。どういった争いだか解らないが、殲滅するぐらいなので、俺に向かって来られたら一溜まりもない。対抗するだけの人数も武器も当然技術も無い。


 行き来している時には思いつきもしなかったが、俺が街道に出入りするときに道端の藪を鉈で切り拓いているので、痕を辿られるとこの家に来てしまう。

 好意的であればこちらも望むところなのだが、皆殺ししているのであればそれも怪しい。元の世界の感覚で無防備だと丸裸にされそう。

 最悪を想定してこちらも準備しなければならない。


 取り敢えずこの家と自分の身を守れるぐらいにしておかなければならないな。



  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆



 次の日から、かつて忍者もののアニメを見た時のように家を中心に半径200mにロープを巡らし鳴子を配置。竹を2本ずつぶら下げて侵入者か何かが触れるとカランカランとなるように、何かあれば直ぐに解るようにした。


 俺自身の装備を対人装備にする。皮で防具を作り、腰にはいつもの鉈、ナイフに剣を下げられるようにし、手頃な竹を切り取り槍を作る。竹槍は先端に焼きを入れ丈夫にする。何と言っても竹槍はB29を撃ち落とせるぐらいだからな。何事も精神力は大事だ。


 そして、手に入れた鋸をフル活用して人形を増産する。


 樵人形を5体新調して伐採、枝打ち、定尺切り、杭作り、運搬を担当させる。

 次に煉瓦造り人形に取り掛かる。粘土の採掘、運搬、整形。日干し煉瓦なのでどんどん出来る。

 黒曜石採掘人形は斧造りを止めさせて、矢を作らせる。



 制作しながら様子を見るが1週間たっても2週間たっても誰か来る様子はなかった。


 狩りなどの食料調達で探索ついでに家周辺を確認しても、俺の足跡しかなかった。

 気の回しすぎかと思ったが油断はできない。実際に争った現場があったのだ。俺の行動跡が見つからなかったとか追跡できなかったとかで、今は来なくても将来来ない保証はないのだ。


 こうして若干肩透かしを食らったような気がしたが、俺の要塞? が完成した。

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