第33話 剥ぎ取る俺
翌朝、よく寝つけないまま早くに目が覚めた。
眠い目をこすりながら朝食の準備に取り掛かる。
最近増産に成功し、供給過剰気味になってきたじゃが芋をせっせと消費しないといけなくなってきた。
芋を薄く切って、
そうポテトチップスである。
そして、
――あんな大量にあるじゃが芋をどうするか…… 牛もどき達の飼料にするか。……じゃが芋はデンプン質だろ。ってことは酒が出来るのかな?
大量にポテトチップスを揚げながらつらつらと考える。
――今日もあの現場に行ってみるか。もっと良いものも落ちてるかもしれないし。
揚げものをしつつ、自分の服を見回す。
――俺の服もそろそろボロボロでどうしようもないな。この身体はまだ成長期なのか少し背も伸びたようだし。あの死体が着ていた服を剥ぎとれば良かったのかも。
血がべっとりと付いた服を着るのを想像して嫌な気分になったが背に腹は代えられないので、ポテトチップスを弁当代わりに頭陀袋に詰め込み、装備を整え現場に向かった。
現場に着いたのは太陽が頂点に差しかかったところだった。
ここに辿りつく道のりで気付いたことがあった。
――この世は魔法が使える。魔法があるってことは魔物が出るのが定説なのかな。ってことは俺も魔物に襲われる危険性があるってことか?
なにが定説なのか普通なんだかよく解らないが、そうなんだろう。
今まで魔物らしき影も形も見たことはないが。
――死んだ奴らも魔物に襲われた?でも刺殺された痕だったし人間同士の争いだよな。
現場に着くと昨日より死体の状況が酷かった。
はらわたを食い散らかされた痕があり、大人の手のひらより大きい足跡が沢山ついていた。
――犬の肉球っぽい足跡だから狼かもな。
恐らく昨日から人も通りかかってないのだろう。新しそうな人の足跡も見つけられなかった。
さすがに、血糊べったり、臓物ぎっとりの服を剥ぎとる気になれず、比較的マシな服や履物を数点、頭陀袋に放り込む。
道端にも何かないかと探していると、50cm角の木箱が茂った草むらの中に埋もれていた。
蓋を開けると大工道具らしきものが入っていた。
ハンマー、錐、鋸、
――大工道具? いや恐らく馬車とか荷車とかの修理道具だろう。襲撃があったときに横倒しになって放り出されたか?
これを持って帰るとなると重い。特に金床なんてただの鉄の塊だし。
でも持って帰りたい。
いま身につけている装備や背負っているものだけでも10kgぐらいはあるだろう。
そこに大工道具一式30kgは過重量でまともに動けない。
――金床は諦めて次回に機会があれば持って帰るか。
帰り道。収穫は大きく気分は軽かったが、荷物は重かった。
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