第29話 失敗続きの俺

 寂しいときは何かに集中することが肝要だ。

 そして衣食住の充実をさせて心のスキマをお埋めしていくのが精神の安定につながるであろう。


 ここでは食。でも食の充実は食材の充実でもあるが調理器具なんかの充実も重要だ。そういう意味では住関連の充実でもある。

 鍋は鉄などの鉱物もないし設備もないのでどうしようもない。一部、竹で代用しているが今ある黒ずんだ銅の鍋1つを使いまわすしか無い。


 そこで皿。深い皿なんかがあると嬉しい。平たい皿は大きな葉っぱや石で代用できるが深い皿はどうも代用できるものがない。

 ここは陶芸でも始めるしか無いな。


 粘土はその辺を掘れば出て来るし少し山を登れば断層状になっているところからもいっぱい掘れるのでこれを使っていく。

 これに枯れ草や麦藁なんかを細かく切ったものを混ぜ込んで成型して干しておくと日干し煉瓦になる。空き時間にせっせと作ること二週間。大量の日干し煉瓦ができてきた。


 それを互い違いに積んでいく。そうすると窯らしきものができた。

 窯の屋根に当たるところの細工は難しかった。木で土台を作りその上に扇状に成型したレンガを乗せていく。組み上がったと思い木の土台を外すと崩落する。これを繰り返すこと7回。ようやくできた。


 そして陶芸教室の本番。

 不格好ながら粘土で皿やカップを形作り、日陰干しをして乾燥させる。


 良く分からないなりに、中に皿を中に並べ、釜の入口からガンガン薪を燃やす。

 窯が温まったら、入口を塞ぎ自然に冷ます。


 「よし、できたかな」


 数日後、窯の入口を開けて中を覗き込む。

 熱気が篭ってたと思われる窯内は今は常温になっているが焦げ臭い匂いが充満している。


 「…………」


 砕けている。半分に割れているのはまだ可愛いもの。原型がわからないぐらいにボロボロになっているものも多い。


 言葉なくバリバリに砕けている陶器のようなものを取り出していく。


 「……全滅だな」


 端から期待を期待をしていなかったが、それでも少しは期待してしまうのが人ってもんですよ。


 ゴミとホコリに化した粘土を釜から引っ張り出し何が悪かったかを検証してみる。


 泡だったような割れ口をしていたりものがあったり、隅においてあったものは割れが少なかったりしていた。


 「うーん。空気が膨張して割れたのかな? 粘土はもっとこねて空気を追い出してやらんといかんか。それと温度調整。これは何度もやってみないとわからないな」


 窯もレンガが割れたり崩れたりしているので手直しをしていく。隙間だらけで窯内の温度も上がらないし、ムラができているようだ。

 二度三度やるうちに窯が崩れ落ちる。


――そうか。勾配があるところで横穴を掘るように作れば保温効率がよくなるんじゃないか?


 そういった、試行錯誤すること余度。

 季節は夏から冬に差し掛かかり、乾季が訪れた頃。


 「……やった! 」


 少し余熱が残り温かい窯内からキンキンと音がする中で、たたずむ男の手の中には小さい素焼きの皿が残っていた。

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