第27話引きつける俺

 色々探索の範囲が広がるにつれ方向が一時的に方向を見失ってしまうことが増えてきた。


 これまでは日の方向や探索時に着いた跡、野生のカンで家に辿りついてきたけど、これってかなり大きな問題。

 なにせ家の周りは野生の王国で夜間に出歩いていると夜行性の動物につけ狙われる。


 前に見たことがある山猫と豹のあいのこみたいな動物が目を光らせて木の上から狙ってやがった。

 それこそ野生のカンで逃げてきたけど、無闇に動き回れない。



 もともと持っていた数少ない道具のうちの一つ。裁縫道具の針。

 針って言っても粗末な針らしきもの。

 太さが5mmぐらいある分厚い針。

 針穴なんてものはなく、鉤があるだけのしろもの。

 これでよく服なんて縫えるよなって感じのもの。

 

 これを磁石にしてみることに。


 平らな石の上に乗っけて石で叩く。ハンマーが無いのでひたすら石で叩く。当然、手が痛くなる。

 これで上手く行けばいいが全然磁化しない。元の世界の映画で観た記憶があったんだけどね……


 焚き火をガンガン燃やし針を熱する。赤くなったら平らな石の上に乗っけて石で叩く。ハンマーが無いのでひたすら石で叩く。当然、手が痛くなる。

 トングや鉄鋏てつばさみみたいなものも無いので木の枝を箸のようにつかい針を操る。上手くいかない。火傷をする。

 これで上手く行けばいいが全然磁化しない。元の世界の映画で観た記憶があったんだけどね……



 他のやり方を試してみる。


 針を焚火に突っ込み空気を送り込む。

 針が赤くなってきたら取り出して、南北を向けて置いて冷ます。

 トングや鉄鋏てつばさみみたいなものも無いので木の枝を箸のようにつかい火で炙られた針を操る。上手くいかない。ちょいちょい火傷する。

 これで上手く行かなかったら泣けてくるところだが、昔の中国で指南魚という磁石の作り方を覚えていたので実践してみた。


 磁化したであろう針を水の上に浮いた木にのせる。

 ゆっくりとだが北と南に向くのでまあ成功と言ってもいいだろう。


 磁力は弱いのでそれほど当てにも長持ちもしないだろうが御守りの意味でも持っておくのは悪くない。

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