第11話あーちゃーな俺
そう、俺は気付いてしまったのだ。
俺の畑はそう大きくない。
大きくないどころではなく小さい。
昼夜なく耕せば3日で終わる。
深く掘り起こしても終わる。
広げようにも木々が生い茂り思うように広げられない。
そこで次なる目標、樵人形の制作だ。
人間が木を切ることは大変それほど難しくはない、人形が切るように作ることは難しい。
まず斧で中心部まで届く様にくの字に切り掻き、反対側をくの字の頂点に向けて斧の刃を入れていく。そうするとくの字に切り掻いた方向に向けて倒れるのだが、倒す方向が家の方向だと困るので、そこら辺を人形が判断しないといけないわけだ。また、切っただけでなく枝打ちして、適度な長さにし、所定の場所に運ばなければいけない。
もっと言うと、畑にするには木の根っこを掘り出さなくてはいけないのだが、これは後回しに。
樵人形は四体に作ることにした。
一体目は木の周りの下草を刈ったり藪を取り払う役目。二体目は単純に木を切り倒すために斧を振るう人形。三体目は枝を鉈で払う人形。四体目は4m程度の丸太に長さに切り分ける人形。
運搬は難しいだろう。重量物を動かすには同等以上の重量物の人形が必要だろう。また、それに耐えられるだけの細工は持っている道具だけではどうにもならない。伐採して放置しておけば水分も抜けて軽くなるかもしれないし。
あと、樵人形は夜の稼働をさせないことにした。これは寝ている時はうるさいだろうし、万が一、木が建物に倒れこんできたら永遠の眠りについてしまうかもしれないからだ。
樵人形の制作は気長にやることにした。
食糧事情があまり良くないし、材料も必要だし、斧ももう一つ必要だ。
石斧でも良いと思うが、それにしても見合うだけの石を見つけてこないといけない。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ここ最近の進歩は、漆の発見と、弓を作ったことだ。
弓は乾燥した木を軸にして、竹を張り合わせ、和弓もどきのようなものを作った。
張り合わせるものはナイフで削って作った木釘と木の皮を漆で貼り付けた。
ちなみに漆があることを何故わかったのか。それは、何の気なしに歩いて手をついたら手がかぶれたのだ。手をついて考え事をしていたら手のひらがじくじく痒くなってきた。イラッと来たので石を投げつけたら樹皮に傷ができ、ジュワッと白い樹液がでてきた。
その時には手が痒くてそのまま川に手を洗いに向かったので終わったのだが、後日、その木を見たら樹液が赤黒くコーティングされたように見えたのだ。
さてはと思い木に触らないようにナイフで樹皮を傷つけ、樹液を採取して乾かしてみると漆っぽい光沢が発現された。
よって漆にちがいないと思ったのだ。
しかし、問題となったのは弦。弦の材料に適したものが周囲に無かった。
麻っぽい植物はあったがどうやれば、繊維だけ取り出せるかよくわからなかったのだ。追々研究してみるつもりだが……
そんなこんなで一番手近なもので代用してみた。
髪の毛である。
もともと肩より長い髪の毛が散髪などと文化的なもの等ないので、かなりの長さになってしまった。それを利用し、髪を縒ってみた。それを漆でコーティングするとかなり頑丈な弦が出来た。
――ふむ。なかなか良い出来だ。
いや。今は頭髪のことを触れるのはよしてくれ。
水面に映る自分を見たくはない。
矢は鏃なんてもんはないし、見合うような石もないので石鏃もできない。他に利用してできるのかもしれないが……
なのでなるべくまっすぐな枝や木を縦に割り裂いて、火であぶり真直ぐに矯正する。そして先端を削り焼きを入れたものでしかない。
矢羽は落ちている羽を利用しつつ、二枚羽にしている。弓なりに200~300mぐらいは飛ぶのかね。この場合は飛ぶだけで的に当るかどうかは別問題。腕も無ければ矢にもばらつきがあってこれで動物が狩れるかと言われるとちょっと……
太さ20cmぐらいの立木を狙って練習を開始。
最初は矢をつがえるのにもたつくし狙いも定まらない。そしてひどい筋肉痛に。
二の腕がパンパンになり、肩甲骨のあたりが左右ばらばらの場所で痛みがでる。なので非常に気になりうまく動けない。
そんなこんなも経験しつつ練習を勤しむとそれなりに当たるように。
30mぐらい離れた場所からだとほぼ当たるようになる。弦がパシュンと空気を振動させる音と、立木にコーンと当たる音が気持ちいい。
パシュン……コーン
パシュン……コーン
パシュン……
パシュン……
パシュン……
バビョーン……
パシュン……コーン
……とまあ100発100中って感じ?
さて、初期に植えたじゃが芋も収穫できるようになったのでお弁当にしてちょっと遠出してみますか。
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