第9話楽をしたい俺

 最近の日課です。

 朝は夜明けとともに目を覚まし、罠を張ったところを一巡。

 掛っていたら捌いてお食事。なければ川に行って魚獲り。

 戻ってきたら畑に水を撒いて、畑の拡張。

 暇を見て、身の回りの物の制作。

 日没前にもう一度罠を一巡。なければ筍や木の実などを採取。

 食事後、人形制作に取り掛かる。



 人形を作るものの何を目指すかが問題だ。

 優先順位としては。

 1、作りやすい。

 2、俺が楽になる。

 3、俺の生活が楽になる。

 4、俺の食生活が楽になる。

 5、俺の重労働が減り楽になる。

 6、俺の生活が向上し楽になる。

 7、俺の性生活がk


 そう、作りやすくて楽になれば良いのだ。

 いま、作業系で何が辛いかというと、畑を耕すこと。

 腰が痛くなる。鍬がすぐにぶっ壊れる。出てくる石が重い。木の根っこが手ごわい。

 当面、鍬の代わりになる人形を作りたい。


 よって手が直接穴が掘れるようにする。そして、前後動ける。左右についてはそれほど重視しない。程度のものを作る予定だ。

 本当はベアリングなんかを使いつつ関節全て動くものが好ましいとは思うがそんな道具も技術力もないし。





 そして打ち込むこと10日間。

 とうとう出来ました。畑仕事専用鍬代替人形その名も【リカちゃん2号】。

 先代は残念な子だったがこいつは凄い。

 足は前後に動く。左右は何度も方向転換しながらなら動ける。

 手はぐるぐる回る。指先は土の中に突っ込んで起こすことが可能。

 木と竹でできているので当然摩耗するが取り換えができる。

 我ながら自分の才能が恐ろしいぜ…


 早速、試運転。

 頭に浮かんだ真言と命令”土を耕せ”と唱える。

 ガガガと木と木がこすりあわされる音がする。

 これはしようがない。そもそも精度を高くできる道具がないし。やすりもないし。


 ガガガ…ガガガ…ガリガリガリ…ガリガリガリ…


 音が変わってきたな…


 ガリガリガリ…バリバリバリ…バリバリバリ…ガコッ…ガガガッ…バキッ…


 不穏な音がする。これ以上はヤバい音が。

 止まれ! 停まれ! 手直しじゃ済まないレベルになる!!

 ちょっ! ちょっと停まれ!!


 バコーン!!!


 四肢が四散した。


 ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……


 またりかちゃんと同じに震えだした。


 「停まれ! 命令取り消し! 辞め! 」


 脳裏に真言が現れ唱えるとりかちゃん2号の残骸の動きは停まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る